9-1 千本通で千本釈迦堂へ

ゆいまくん 百花さん! 4年ぶりに新しい国宝の仏像彫刻が誕生したんだよ(2024年指定)。
百花さん えーと、この前に国宝に指定された仏像彫刻は、たしか京都の法金剛院の阿弥陀さま * …よね。今回はどこの仏像が国宝になったの?
ゆいまくん 今回も京都。大報恩寺というお寺の仏像なんだ。さっそく見に行くよ!
このお寺は千本釈迦堂とも言うんだ。碁盤の目に例えられる京都のまちを南北に通っている道の1つ、千本通(せんぼんどおり)に近いところにあって、本尊がお釈迦さまだから、そう呼ばれるんだ。
百花さん 千本通の千本釈迦堂… 覚えやすくていいけど、千本って何が千本なの? 「針千本」とか、約束破ったら飲まされるヤツだったりして。
ゆいまくん 実は、この通りがなぜ千本通と呼ばれているのかは、よくわかっていないんだ。その昔は、ここには平安京のメインストリート、朱雀(すざく)大路があってね、その跡につくられた通りなんだ。もう少し北に船岡山っていう丘があって、かつてそこは埋葬の場であったため、たくさんの卒塔婆(そとば、そとうば、お墓などに供える木の墓標のこと)が立っていたらしい。
百花さん げっ、じゃあ千本っていうのは無数のお墓ってこと? やだ。私、怖い話はちょっと‥
ゆいまくん 別の説もあるよ。一夜にして千本の松が生えたという話もあるんだ。
百花さん お墓もヤだけど、一晩で木がニョキニョキ生えたら、そっちの方がもっと怖いかも。今日、行くの嫌になって来た。他に説はないの? エモい系とか。
ゆいまくん エモいかどうかはわからないけど、千本通の近くにある釈迦堂だから千本釈迦堂と呼ばれたというのは実は逆で、釈迦堂にちなんで道が千本通と名づけられたという説があるんだ。百花さんは、垂木(たるき)ってわかるかな。屋根を支える重要な部材で、もちろん一般住宅でも使われるけど、寺院のお堂のような大きくて軒を深く出す建物ではとても多くの垂木が使われている。ほら、お堂を見上げると、屋根の下に整然と並んでいる…
百花さん あ、何となくわかるかも。
ゆいまくん これから行く大報恩寺の本堂は鎌倉時代の建物なんだけど、垂木の総数がちょうど千本 ** なんだ。だから千本釈迦堂。そこから通りの名前も千本通となったっていうんだよ。あくまで1つの説だけどね。
百花さん えっ、1つのお堂で垂木ってそんなに使われるの? しかも1000本というピッタリした数だなんて。これはホラ説だな。ホラー説のあとはホラ説ってか。
ゆいまくん ひどいな、ホラだなんて。千本通のもとになったのが釈迦堂の垂木が千本だったというのは説には過ぎないけど、お堂の垂木が千本というのは本当の話なんだよ。あ、信用していないな。じゃあ、現地で確かめよう!
百花さん もしウソだったら、針千本飲ませまーす!
(注)
* 法金剛院阿弥陀如来坐像が国宝指定されたのは2020年
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垂木にも地垂木、飛檐(ひえん)垂木、打越垂木と種類があるが、大報恩寺本堂ではそれらの総数が1000本になっている。これは建物の大きさと垂木の間隔・本数を決めて設計を進める技法が確立したことによる。大報恩寺本堂に限らず、平安時代後期から室町時代にかけて、垂木が700本、900本、1,100本などの100の倍数となっている建物がいくつもつくられている。(参考文献の『アジアの仏教建築』の第7章「大報恩寺本堂 辿り着いた日本固有の仏教空間」を参照のこと)
せきどよしおの仏像探訪記
ゆいまくんと百花さんの 21世紀国宝仏の旅