4-8 拝観を終えて-百花の感想

 

 四天王像はお堂の壇の端に安置される脇役的存在ですが、仏の世界を守護する頼もしい守護神なんですね。仏像とひとくちに言ってもさまざまで、こうした迫力、躍動感のある像もあるんだなあと思いました。
 興福寺は、藤原氏の氏寺であるとともに国家の寺でもあったとか。日本のお寺の中でも代表選手級ですね。創建時以来というお堂は現存しないものの、多くのお堂は繰り返し再建され、今日へと伝統をつないできました。
 そうしたお堂の中で、中央に位置している金堂につぐ重要な建物が南円堂なんだそうです。普段は中には入れませんが、年に1日だけ拝観できる日にはとても多くの人が訪れます。康慶とその一門が制作した11体、ひと揃いの仏像を堪能できるチャンスですから、多少の混雑もやむを得ないですね。外から入ってくる光のもと、それぞれの像の姿がよくわかって、感動しました!

 南円堂の四天王像は、姿勢はちょっとぎこちないかなーって思いましたが、全体としては統一性があり、カッコよく、鎧の意匠などていねいで、かわいらしく見えるところもあって、よかったです。私としては、動きに工夫をこらした増長天さんにも大いに惹かれますが、ここはやっぱり、袖が翻る様子からまわりの空気の動きまでも感じられて、ほんとうにすばらしいということで、広目天さん「推し」としたいです! ゆいまくんが、動きによって風が感じられるのは、まわりの空間も含めて「彫刻されている」ってことなんだってぼそって言ってましたけど、言えてるーって感じ。
 この四天王像が南円堂に戻ることになった経緯も、面白く思いました。それまであまり注目されてこなかった像が、康慶一門の力作として俄然見直されたという流れも面白いし、考えさせられることも多いです。とにかく、11体が元の通り揃うことになって、仏さま方もきっと喜んでいるんじゃないかな。

 康慶は、生没年も不明、どんな人物なのかまとまって書き残されたりはしなかったので、お堂の中の四天王と同じように、歴史の中では脇役的存在ということになるのでしょうね。でも、断片的に残るエピソードをつなぎ合わせることで、人となりや仏像彫刻史に占める重要性がはっきりしてきます。そう、焦点が絞れてくればがぜん魅力が見えてくるってやつですね。南円堂四天王像でもそうだし、康慶さんについてもこれってあてはまると思います。
 康慶さんは、先を見通す眼を持ち、一派を立ち上げて大きく育て、弟子は適材適所に、現場での信頼を勝ち得て、お偉いさんにも臆せず物申すって、「理想の上司」じゃないですか。SNSで呼びかけて、康慶を「上司にしたい人ランキング」1位に推したいって思っちゃいました。

 


<百花さんから追加のひとこと>
 銘文に師の康朝や、のちに鎌倉幕府と深いかかわりをもつ人物の名前が書かれているという、康慶作地蔵菩薩像が伝わる瑞林寺は、静岡県富士市というところにあります。南円堂が開かれるのも年に1度ですが、瑞林寺の仏像公開も同じく年に1日だけ。こちらは、8月15日(午前中)とのことです。