1-1 京都の法金剛院を訪れます

青女の滝
青女の滝

ゆいまくん 今日はね、京都市右京区にある法金剛院を訪れるよ。12世紀前半に創建されたお寺だから、およそ900年の歴史がある古寺なんだ。

百花さん 900年前というと…

ゆいまくん 平安時代の末期だよ。
 お寺の中心としてまつられている仏像を本尊というんだけど、法金剛院の本尊は阿弥陀如来像だよ。創建以来ずっとこのお寺でおまつりされてきた由緒ある仏像で、2020年に国宝となったんだ。現在のところ最も新しい国宝仏像なんだよ。
 場所はね、京都駅から山陰本線(嵯峨野線)の各駅停車で五つめ、花園という駅で下車して、丸太町通という大きな道路を渡るとすぐなんだ。

法金剛院は花園駅下車、北西にすぐ!
法金剛院は花園駅下車、北西にすぐ!

百花さん こちらのお寺ね。京都は夏も冬も気候が厳しいし、私、歩くのはあんまり好きじゃないから、遠い道のりだったらやだなーって思っていたけど、駅近で超ラッキー(♡)。 
 大きな池があって、雰囲気もステキ! 駅や大きな道路からすぐなのに、門を入ったらとても静かで、別世界みたい。
 こんな素敵なお寺を開いたのは誰なの?

ゆいまくん 法金剛院を開いたのは、待賢門院(たいけんもんいん)という人なんだ。目の前にあるお庭もこの方がつくらせたものなんだよ。長いこと埋まっていたんだけど、1970年ごろに整備されて、今見るような美しい姿によみがえったんだ。特に貴重なのは「青女(せいじょ)の滝」と呼ばれている人工の滝の石組みが発見されたことだよ。いったん完成した滝が気に入らなかったのか、待賢門院が自ら指示を出し、高さを上げさせたといういわれがあり、その記録のとおり大石が二段に積まれているのを見ることができるんだ。

百花さん 滝ってこれ? かわいい! 大きな石を組み合わせて、そこを伝って水が落ちているんですね。900年も前の記録が残っていて、実際に今もその石が置かれているなんて、なんかすごい。

ゆいまくん 当時の石組みがそのまま残されているのは大変貴重だとして、特別名勝に指定されているんだよ。庭園など人が鑑賞する場所の中で価値が高いものを指定したものが名勝なんだけど、その中で特別に貴重なものだけが特別名勝となっているんだ。全国で30数か所しかないんだよ。

百花さん それじゃあ、このお寺の庭は国宝級ということなのね *。

ゆいまくん このお寺はまた、四季折々の花の美しさでも知られていて、特に蓮が有名なんだ。蓮の季節といえば、7月。早朝に開いた花は、午後にはつぼみはじめ、夕方に閉じ、また次に日の朝に開くというのを繰り返して、4日ほどで散ってゆくんだ。このお寺の蓮を楽しみにしている人は多く、蓮が開くとご門のところに「蓮、開花」と大きく案内が出て、その時期だけ拝観時間も早められるんだよ。

百花さん ゆいまくんは、花のことも詳しいのね。どうせなら、その季節に来たかったなー。

ゆいまくん もちろんお寺に来て花を楽しむのもいいけど、仏像とゆっくり向き合いたければ、人がたくさん来る時期は避けるというのもありだと思うよ。よしんば、花の季節に合わせて訪れたとしても、まずはご本尊にご挨拶するということを忘れてはいけません。仏さまそっちのけで花の写真を撮るのに夢中になっている方を見かけることがあるけど、どんなものかな。信じる心が至らないのは仕方がないとしても、礼儀を忘れるのは困ります。
 
百花さん うへっ、耳が痛いかも…


(注)
* 特別名勝に指定されているのは庭全体ではなく、青女の滝と裏手の五位山である。五位山は、ここが法金剛院となる以前、仁明天皇がこの景勝を愛でて、五位の位階を与えたことからつけられた名という。なお五位山は附(つけたり)指定である。附指定とは、メインの指定物(この場合は青女の滝)に併せて指定したもの。

現在の法金剛院の池は、今の境内の大きさにあわせて復元されたものに過ぎず、本来は対岸の御所から御堂まで舟で渡るほどの大きな池であった(『長秋記』)。