1-5 台座と光背を見るべし!

百花さん ほかにも、この仏像の特色はありますか。

ゆいまくん じゃあね、次は台座と光背(こうはい)にも注目してみよう。仏像やお堂をおごそかに飾ることを荘厳(しょうごん)っていうんだけど、台座と光背はそのもっとも基本的なものなんだよ。そして、そこにもこの仏像ならではの美があるんだ。
 仏像が直接乗っている台座は、花弁がとりつけられて華やかな印象があるよね。これは蓮の花をかたどっている台座なので、蓮華座というんだ。
 法金剛院のお庭は蓮で有名だけど、蓮は悟りを象徴するものとして仏教ではとても大切な花とされ、如来像や菩薩像の台座の形式として多く用いられている。蓮華座の下には、いろいろな形の座が何重にもなって高さをかせぎ、上にのる仏像をいっそう立派なものに見せているよね。逆に、こうした立派な台座の形状から、この仏像がいかに入念につくられ、まつられているのかがわかるというものだ。
 一方、仏像の後ろに広がって立っている板を光背といい、これは仏が光り輝く存在であることをあらわすものなんだ。

百花さん 台座と光背って、仏像の神々しさをいっそう引き立てるための舞台装置のようなものなのね。この仏像の台座、光背は仏像本体と同時につくられたものなんですか。

ゆいまくん この仏像の場合、台座、光背は、すべてではないものの、仏像と同時につくられた部分がかなりよく残っていて、たいへん貴重なんだ。
 この仏像の台座の特色だけどね、蓮の花びら(蓮弁)1枚1枚の中にさらに細かい植物の模様の浮き彫りがほどこされているんだ。実に繊細な模様で、優美さの追求が極限まで進んだものということができる。

 

台座蓮弁の模様(宝相華文)
台座蓮弁の模様(宝相華文)

百花さん えっ、どこですか? それぞれの花びらに…あっ、わかりました! 細かい模様が浮き出ていますね。とってもかわいい(♡)。この模様で雑貨をつくったらウケそう。

ゆいまくん (小声で)実を言うとね、私はこの花弁の浮き彫りはちょっとやり過ぎのように感じるんだけどね… 

百花さん えっ、何か言いましたか? よく聞こえなかったんですけど。
 
ゆいまくん いや、話を進めましょう。次は光背の特色について。
 この仏像の光背は、中央部分とそのまわりの派手に広がっている周縁部からできている。中央部は円を2つ縦に重ねたようになっているよね。これを二重円相というんだ。
 光背は薄い板でつくられているので、当初のものがそっくり伝わっているということのほうがまれで、この像の光背も周縁部は後補、つまりあとの時代につくり直されたものなんだ。でも、中央の二重円相は当初のものなんだよ。
 像の頭部、体部の後ろに黒く見えているところだよ。ここをよく見てご覧。とっても繊細で美しい透かし彫りがほどこされているんだけど、わかるかな。

百花さん 雲? それとも植物か何かですか? きれいな模様がいくつも連なって、とても美しい…

ゆいまくん こうした台座や光背の文様を見ると、この仏像をつくらせた待賢門院や制作にあたった仏師がいかに繊細な美を求める心を持っていたのかがわかるね。

 

阿弥陀如来像の光背(部分)
阿弥陀如来像の光背(部分)