周防国分寺金堂安置の五仏

  高麗の金銅仏と日本の木彫という異色の組み合わせ

住所

防府市国分寺町2-67

 

 

訪問日

2009年3月29日

 

 

この仏像(毘盧舎那如来像)の姿は(外部リンク)

周防国分寺ホームページ・文化財

 

 

 

拝観までの道

周防国分寺金堂の薬師三尊像の項をご覧ください。

金堂拝観は月曜日お休み。

 

 

拝観料

500円

 

 

お寺や仏像のいわれなど

周防国分寺金堂には、薬師三尊像をはじめとする須弥壇上の仏のほかに、時代も大きさもさまざまな仏像が多く安置されている。廃絶したお堂や子院の仏像と思われるが、不動明王、愛染明王など密教関係の仏像が多い。

 

古代の周防国分寺の様子は、史料がないためほとんど不明である。金堂の薬師三尊像脇侍や四天王像が平安時代の作であることから、活発な造像活動があったことが推測されるが、他の国分寺同様古代国家の衰退とともに次第に衰えていったものと思われる。

その後、鎌倉時代の末期になって西大寺流の真言律の影響力が西国に強まり、周防国分寺もその門流となった。今、金堂に安置されている仏像の多くが密教的な像であるのは、このお寺が西大寺流の密教寺院であった時代が長かったからである(現在は周防国分寺は真言宗の寺院である)。

 

 

拝観の環境

堂内は明るく、また近くに寄ってよく拝観できる。

 

 

仏像の印象

本尊の裏側、北向きに五仏が安置されているが、これも密教の仏である金剛界五仏である。

ただし、一般的な像とは異なり、五仏の中心である大日如来にあたる像のみ銅造で、他は木造という異色の組み合わせである。

 

まず銅造の仏像だが、印こそ通例の智拳印(胸の前で忍者のように印を結ぶ)であるが、大日如来がまげを結い、冠やアクセサリーをつけた姿であらわされるのに対して、この像は螺髪で、衣も一般の如来と同じようにつける。この形の像は日本では見られないが、朝鮮ではつくられ、盧舎那仏(昆盧舎那仏)であるという。中世、周防国分寺は中国地方の大名・大内氏の外護があったが、この像は大内氏の朝鮮貿易によってもたらされた仏像かと思われる。

 

顔はやや下ぶくれであるが、やさしくほほえんでいて親しみを感じる。肉髻は低く、地髪部との境ははっきりとしない。螺髪は細かく、きれいに揃い、生え際は上方にカーブしている。なで肩、上背が高く、やや細身であり、下半身は小さい。腹前に紐の結び目が見えているのがアクセントとなっている。

像高は約50センチ。13世紀ごろ、朝鮮の高麗王朝時代の末期の作と思われる。

 

木造の四仏も像高は約50センチと、盧舎那仏像とほとんど同じなので、請来した盧舎那仏を大日如来として、これに合わせてつくられたのではないかとも考えられる。しかし、盧舎那仏が細身であるのに対し四仏はずんぐりしているので、一見四仏の方がかなり大きく見える。

室町時代の仏像に多く見られる四角張った顔と体で、螺髪は比較的大粒であり、髪際は中央が少し下がる。盧舎那仏と像高こそほぼ同じだが、特徴はまったく異なるのが逆に面白い。像名は不空成就如来、宝生如来、阿弥陀如来、薬師如来と伝えられるが、本来は金剛界五仏には薬師でなく、阿しゅく如来が入る。薬師像の薬壷を持つ左手は後補なので、本来は阿しゅく如来であったと思われる。

 

寺伝によると、これら五仏は五重塔に安置されていたという。そうであるならば、五重塔は創建時の塔が失われたあといつの時代にか再建されたものの、その塔も1417年の火災で失われたと考えられているので、四仏はそれ以前の作、すなわち南北朝時代から室町時代前期のものとなろう。しかし、1417年の火災後に再興された金堂薬師三尊中尊像やその光背の化仏との比較から、中尊薬師像とそう違わない時期とも考えられる。

 

 

その他1

金堂内にはこのほかにもさなざまな仏像が安置されている。

十二天立像は、絵画作品はよく見られるが彫刻はめずらしい。像高70センチあまりで、近世の作。20臂の普賢延命像は4頭の象座に乗り、それぞれの象の頭には眷属が付く。4頭の象の下は法輪で、それが無数のうずくまる象によって支えられているという姿で、これも絵画はともかく彫刻作品はめずらしい。また、やはり大随求菩薩坐像というあまり見ない像や、蓮の葉の台座に乗る大黒天像なども安置されている。

 

 

その他2

金堂のほかには、持仏堂(客殿)というお堂にもさまざまな時代の仏像がまつられているが、平素は非公開。本尊の阿弥陀如来像は像高110センチ余の坐像で、平安末ごろの像。ほかに南北朝時代ころの釈迦三尊像など。1月11日の法要の際にはお堂が開かれるらしい。

 

 

さらに知りたい時は…

『周防国分寺展』(展覧会図録)、山口県立美術館、2004年

『東大寺のすべて』(展覧会図録)、奈良国立博物館ほか、2002年

「周防国分寺金堂本尊薬師如来像をめぐって」(『山口県文化財』30)、岩井共二、山口県文化財愛護協会、1999年

 

 

仏像探訪記/山口県