ごあいさつ

「せきどよしおの仏像探訪記」開設のいきさつについて

三冊の本との出会い
三冊の本との出会い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 せきどの仏像好きは中学生の時以来のものです。絵画や陶磁など日本の美術全般に興味がありますが、中でも仏像に最も魅力を感じます。立体の造型の妙、飛鳥から鎌倉・室町、さらに近世に至るまで各時代ごと特徴があり、それぞれに優れた作品があること、美を追求しながら、同時に宗教性というか単なる美意識を越えたところをめざしているように感じられるものがあることなどがその理由であるように思います。

 

 仏像好きになったのには、次の3冊の本と出会ったことが大きなきっかけとなっています。その3冊とは、『仏像−祈りの美』(佐和隆研、平凡社カラー新書)、『仏像の旅-辺境の古仏』(久野健、芸艸堂)、『地方佛』(丸山尚一、鹿島研究所出版会)。いずれも1974〜75年に出版されている本です。

 

 3冊のうち、最初に読んだのは『仏像  祈りの美』でした。入門書として優れ、仏像の種類や歴史についてのおおまかな知識はこの本から学びました。入江泰吉による美しい写真の魅力もあって、中学生だった私はすっかり仏像大好きになりました。中3の修学旅行では、法隆寺の金堂諸像に感激したことを記憶していますが、若干の知識が事前にあったことで自分なりの鑑賞ができ、感動が大きかったのだと思います。

 

 『仏像の旅  辺境の古仏』は、国立文化財研究所(当時)の久野健氏が、戦後間もなくから約30年の間に調査に行った全国の寺社への旅の記録です。交通機関が整備されていない場所では地元の人のオート三輪(実際それがどういうものなのかいまだに私は知りませんが)の助けをかりたり、住職さんまでかりだして仏像撮影を行ったりと、仏像の魅力が人の温かさとともに描かれていて、強く魅了されました。

 我々はとかく国宝だから、重要文化財だから優品であろうといった思い込みで仏像を見がちです。しかしこの本ではしばしば、修理を経て美しく整えられ指定を受ける以前の仏像との出会いが述べられます。どの時代に属し、時代や地域を代表するような優品であるのかどうかを見極めていく久野氏の目に驚きを感じながら読んだことを覚えています。

 

 『地方佛』は、『仏像の旅-辺境の古仏』では紹介されていない仏像が数多く掲載され、写真もふんだんで、地方の仏像への旅を自分もしたいという気持ちを強く抱かせました。

 

 しかしながら、これらの本との出会いから約30年、その間どれだけの仏像彫刻に出会うことができたてきたかといえば、はなはだ心もとない状態でした。                      

 「仕事やその他のことが忙しい…」「機会があれば、ぜひ行きたいのだが…」などと思い思い時間が過ぎ、そして2006年、「自分から作ろうとしなければ、機会など来ないのだ!」と突然思いたちました。以来、毎月どこかしらの仏像を探訪しています。

 

 ところで、現代は情報が溢れている時代ですが、京都・奈良・鎌倉のような観光地以外の寺院の仏像が拝観できるかどうかは、なかなかつかみにくいということがあります。また、今や自家用車での訪問が前提のように紹介されている情報もあり、私のように車を持たない個人にとっての交通の便に関する情報は不足となりがちです。

 そこで、せっかく仏像探訪を果たしたら、仏像の印象だけでなく、拝観にあたって事前連絡の必要があるか、そこまでの交通の便、さらに拝観の環境がどうであるのかまでを加えて、ホームページで公開したいと考えるようになりました。

 なにぶん、個人が休みの日にちょこちょことやる程度のことですので限界はありますが、同好の士に何かしらのお役に立てれば、これ以上の幸せはありません。

 

プロフィール

せきど よしお (寂土 善夫)

1960年 東京都出身

1982年から現在まで 中・高・特別支援学校教員

2002年 学芸員資格取得

2006年 神奈川県美術展入選(写真部門)

 

 

 

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