浄土院の阿弥陀如来像
1095年造立の基準作例
住所
京都市上京区今出川通千本西入南上善寺町179
訪問日
2024年2月24日
拝観までの道
最寄バス停は「千本今出川」、下車すぐ。最寄り駅は京都市営地下鉄烏丸線の今出川駅で、今出川通りを西へ徒歩約25分。
拝観は事前連絡必要。
拝観料
500円
お寺や仏像のいわれなど
浄土宗寺院。近くにあった天台宗般舟院の隠居寺としてつくられたという。
通称を「湯たくさん茶くれん寺」というそうで、これは秀吉が訪れ茶を求めた話に基づいている。秀吉が2杯目を所望したところ、住職は自分のようなものがたてた茶よりも境内の井戸の名水の方が失礼にあたらないだろうと思い、以後、白湯を出し続けたことから、「湯ばっかりで茶をなぜくれないのか」と言われたところから来ているという。この井戸は現在も残されているが、残念ながら水は枯れてしまっているそうだ。
なお、こうした通称名をもつ京都の40ほどのお寺で「通称寺の会」をつくっていて、たとえば、釘抜地蔵(石像寺)、真如堂(真生極楽寺)、めやみ地蔵(仲源寺)、那須の与一さん(即成院)、嵯峨釈迦堂(清凉寺)、花の寺(勝持寺)、日野薬師(法界寺)、橋寺(放生院)などがあるとのこと。浄土院も地元では「茶くれん寺さん」と呼ばれることが多いという。
拝観の環境
堂内で拝観させていただける。
仏像の印象
本尊の阿弥陀如来像は像高およそ90センチの坐像。来迎印をあらわす。
ヒノキの寄木造、表面の漆箔や彫眼。光背、台座は後補。右腕も後補の可能性。また、鼻のあたりには直したあとがあるらしい。
プロポーションのよい像である。肉髻が自然に盛り上がり、螺髪の粒は小さくきれいに揃う。眉が美しく目は伏し目がちで、鼻筋が通り、いかにも人を超越した仏さまの顔立ちをしている。顔は若干右(向かって左)の方を向いているようにも見える。
上半身は大きく、堂々としている。ややなで肩。衣のひだの流れは等間隔につくられ、美しい。
像内にかなり長文の銘文があり、不明なところもあるが、造像年が明記されており、平安時代の仏像の貴重な基準作例である。銘文は像内背部と右脇腹部にある。
それらによると、浄土院の伽藍は1095年に無縁僧寂能によってつくりはじめられ、多くの勧進によるものであると書かれる。この像は1096年よりつくりはじめたものであり、願主は真国、快誉と女弟子河内仲子とある。このほか僧快厳の名も書かれる(脇腹部)。また、経典から引かれた文章とともに大日如来などをあらわす5つの種子が書かれている。
当時の信仰の姿を示すものとしても貴重である。
さらに知りたい時は…
『 日本彫刻史基礎資料集成 平安時代・造像銘記篇』第2巻、中央公論美術出版、1967年
→ 仏像探訪記/京都市