真正極楽寺の阿弥陀如来像

  毎年11月15日に開扉

住所

京都市左京区浄土寺真如町82

 

 

訪問日 

2009年11月15日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

真正極楽寺 真如堂・仏像

 

 

 

拝観までの道

真正(しんしょう)極楽寺の門はお寺の西にあり、本堂も西面する。

正面から入るには、京阪線の神宮丸太町駅から東北東に歩いて20〜25分。

また、本堂の裏に抜けて東へと下ると、「真如堂前」バス停がある。そこから南に歩くと20分くらいで蹴上(けあげ)駅(地下鉄東西線)にも行ける。

 

本尊は秘仏の阿弥陀如来像で、年に一度、11月15日に開扉される。この日は11月5日からはじまる「お十夜」という行事の最終日で、お練り供養があり、多くの人がこの寺を訪れる。

本堂内での拝観は無料であるが、特別拝観料を払うと阿弥陀さまのすぐ前から拝観させていただける。

 

 

拝観料

特別拝観料500円

 

 

お寺や仏像のいわれ

真正極楽寺、つまり本当の極楽がここにあるというなかなか凄いネーミングのお寺であるが、京の人たちは親しみをこめて「真如堂さん」と呼ぶ。この「真如」も仏教の言葉で「真実」「仏の悟り」のことをさす重たい言葉なのであるが。

 

このお寺に伝わる絵巻物の「真如堂縁起」によれば、神から柏の霊木を受けた円仁が2躰の阿弥陀像を刻み、その1躰がこの真如堂の阿弥陀さまという。「うなずきの阿弥陀」とも呼ばれ、それは「比叡山をお守りください」と言うと首を横に、「では京に下って女人をお救いください」というと首を縦にふったためとお寺では説明している。しかし「真如堂縁起」には、円仁は額に玉を入れずに祈ったところ、仏像が3度うなずいたと書いてある。確かにこの像には額に白毫がない。

さらにこの像は、円仁が入唐した際に船中に出現した小身の阿弥陀像が像内に籠められていたという。

 

円仁の時代から100年以上たった10世紀後半、比叡山の戒算が夢告を受けて、京の女人の救済のためにこの仏像を移した。場所は現在地の近くだったようで、これが真正極楽寺のはじまりである。以後寺は栄えて、平安末から鎌倉時代にかけては法然上人をはじめとする多くの人々を引きつけたが、その後のこの寺の動向はよくわからない。というのも、応仁の乱とその後の移転の歴史の中で、本尊は救い出されたものの、古記録が失われてしまったからである。

そののち本尊はいくつもの地を転々と移らざるを得ない時期が続いた。「真如堂前町」「元真如堂町」といった地名が何カ所か残るが、それはこの一時移転の名残りだそうだ。結局江戸時代中期に現在の寺地に復し、勧進によって今の建物が建てられたという。

 

 

拝観の環境

特別拝観料を払うと、本堂の内陣の須弥壇上へ進むことが許される。

お堂の中でも、内陣は特に聖性の強い場所である。まして、須弥壇に上がるということは、お寺のお坊さん以外には一般に考えられないことで、このお寺では参拝の方を壇に上がらせるために、「南無阿弥陀仏」と大書したゼッケンを着させるということをしている。これをまとうことで、一時的に不浄の身から脱して、そこに昇ることができるということであろう。

 

壇に上がる際に、厨子の横手が一部開かれて、像の側面が少し見える。その後は、正面に進んだ時にほぼ全身を見ることができる。そのポジションはほぼ定員1名で、後から次の人が来るので、長く見ていることはできない。数秒からせいぜい数十秒だが、得難い体験と思う。

 

 

仏像の印象

阿弥陀如来像は、像高1メートル強の立像。カヤの一木造。来迎印に似た印相の阿弥陀さまである(右手は親指と人差し指で丸をつくるが、左手は親指と中指で丸をつくるとともに薬指を少し曲げている)。

肉髻は低く、螺髪は小粒で美しい。頬が張った豊かな顔立ちである。なで肩。ほぼ直立するが、お腹や太ももの肉付きは豊かである。下肢の衣文線は太く強い。一方、襟元や腕から下がる衣の線は技巧的である。魅力ある仏さまと思う。

平安時代の中期ごろの作と思われ、『真如堂縁起』にいう円仁自刻の像を京に移しこの寺が創建された時期、すなわち10世紀末ごろ(定朝の師で父ともいわれる康尚の活躍期にあたる)に造られたものと推測される。

実は、この像以前に阿弥陀如来像は坐像か倚像しかなく、阿弥陀如来の立像の確かな例としてこの像は最古のものとなる。

 

ところで、このご開帳時、本尊の前に小さな厨子が置かれる。中は暗くてよく分からないが、本尊の像内に納められていた小身の阿弥陀像(円仁が船中で出現を見たという仏さま)が安置されているという。

 

 

その他

京都府大山崎町の大念寺に伝わる阿弥陀如来立像(鎌倉時代)は、この真如堂阿弥陀如来像の模刻像である。→ 大念寺のページを見る

 

 

さらに知りたい時は…

『最澄と天台宗のすべて』(展覧会図録)、東京国立博物館ほか、2021年

『仏像歳時記』、關信子、東京堂出版、2013年

『吉田山と白川』(『週刊古社名刹巡拝の旅』26)、集英社、2009年11月

『仏師康尚の時代』、仏教美術研究上野記念財団助成研究会、2008年

「真正極楽寺(真如堂)《阿弥陀如来立像》をめぐって」(『美術フォーラム21』15)、井上一稔、2007年5月

『真如堂』(『京の古寺から 11』)、淡交社、1995年

『清水寺縁起、真如堂縁起』(『続々絵巻大成』伝記・縁起篇5)、中央公論社、1994年

『京都社寺調査報告』5、京都国立博物館、1985年

「童顔の仏・菩薩」(『日本美術工芸』417)、井上正、1973年6月

 

 

仏像探訪記/京都市