府南寺の金剛力士像
東大寺南大門の仁王像の系譜を引く
住所
鈴鹿市国府町2548
訪問日
2007年8月9日
この仏像の姿(外部リンク)
三重県教育委員会・みんなで、守ろう!活かそう!文化財・情報データベース
拝観までの道
府南寺へは、近鉄の白子駅と平田町を結ぶ鈴鹿コミュニティバスで「国府郵便局」で下車し北に数分、または平田町と亀山を結ぶ三重交通バスで「国府」で下車し、東へ数分である。
筆者は妙福寺を拝観したあと、「徳居」バス停からコミュニティバスを使ったのだが、乗車時間30分ぐらいであった。鈴鹿サーキットの南側から北西側へと移動したことになる。
拝観料
特になし
府南寺について
このあたりは国府(こう)という地名で、近くには金製の副葬品が出土したことで知られる古墳群も残り、古くから栄えた地であった。伊勢国の国衙の跡も近いが、そこは南北朝時代に城となったため、国府城跡とよばれている。
府南寺はその名のとおり国府の南に位置した古寺であるが、他の鈴鹿の寺院と同様兵火にあい、場所も移っている。
金剛力士像について
仁王門内に立つ金剛力士像(仁王像)は、鎌倉末から南北朝時代と考えられている。
ヒノキの寄木造で、眼は玉眼である。高さは2メートルを越え、迫力、安定感をともにもつ像で、鎌倉彫刻の特色をよく伝える。持物も当初のもの。山門で直接外気にさらされる金剛力士像の中では保存良好であり、貴重である。
拝観の環境
金剛力士像を安置する門自体が耐火建築でつくられている。像は中央の通り抜けられる通路の左右に一体ずつ閉じ込められているように置かれている。正面と通路側に窓が設けられ、拝観できるようになっているが、ガラス越しでは見にくく、特に正面の側は反射が強く、拝観が難しい。上述の通り、保存状態よく伝来してきた像をさらに後世へと守り伝えるためにはやむを得ない措置ではあるが。
その他
府南寺金剛力士像は、向って左側が口を大きく開いた阿形像、右側が口を結んだ吽形像となっているが、これは通例とは逆の配置である。
この左右逆配置の金剛力士像としては、東大寺南大門の像が有名である。そして府南寺像と東大寺像はそのほかにも共通点が多い。特に阿形像はほとんど同じ姿である。吽形像も金剛杵(こんごうしょ)という武器の持ち方や右足先を上げている様子が共通する(右手の上げ方や翻る天衣の広がり方は異なる)。
東大寺南大門の金剛力士像はあれほどまでに名高いにもかかわらず、なぜか継承されることが少なかった。府南寺像は、東大寺仁王像の形式を継いだ数少ない像のひとつと思われる。
さらに知りたい時は…
『三重県史 別編 美術工芸』、三重県、2014年
『仁王』、一坂太郎、中公新書、2009年
『解説版 新指定重要文化財3、彫刻』、毎日新聞社、1981年