北条寺の阿弥陀像・観音像

  北条氏ゆかりのお寺に伝わる仏像

住所

伊豆の国市南江間862-1

 

 

訪問日 

2007年9月23日、 2014年3月30日

 

 

 

拝観までの道

北条寺は伊豆箱根鉄道駿豆線の韮山駅のほぼ真西にあるが、その間には狩野(かの)川が流れているため、駅から北西方向にある松原橋を渡る。そのまま真っすぐ西へ600メートルほど行った信号の交差点を左折し、そこから南に約400メートル進むと、北条寺を示す看板がある。駅から25分から30分くらい。

他の手段としては、韮山駅か伊豆長岡駅よりタクシー。

 

拝観には事前連絡が必要である。

 

北條寺ホームページ

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺のいわれ

ご住職の話によると、北条寺のあるあたりは鎌倉北条氏2代目の義時が若き日に屋敷を構えたところという。義時の父時政の屋敷は願成就院の近くで、現在では狩野川を隔て対岸であるが、当時は川はもっと東を流れていたため、2つの屋敷は近かったのだそうだ。

大蛇に飲まれて命を落とした我が子を弔うために義時が建立したのがこの北条寺であると伝えるが、実際には南北朝期の創建らしい。かつては宝城寺と称した。

 

戦国時代には後北条氏によって保護されたが、秀吉によって焼かれ、その後江戸時代に再建されるも、火事や台風によって古い建物は残っていない。しかし江戸時代の絵馬が多く残り、かつては盛んに巡礼されていたことが知られる。

 

 

拝観の環境

1970年代に再建された本堂の正面に、鎌倉時代前期ごろの阿弥陀如来坐像と南北朝時代ごろの観音菩薩坐像が安置されている。

この2躰の前にはガラスが入っているが、近寄って拝観できる。

 

 

仏像の印象

阿弥陀像は像高約70センチと等身大より少し小さな像で、ヒノキの寄木造である。

若々しく、引き締まった表情で、慶派仏師の作であることを思わせる。像底が「上げ底式」になっているそうで、これも慶派によく見られる技法である。本尊の向って右側に安置されている。

螺髪は美しく整い、最前列は下向き加減であるのが目を引く。衣の処理は、左肩での折り返しをはじめなかなか装飾的で、華やかである。

 

本堂の正面の観音像は50センチに満たない小像であるが、この寺の本尊である。カツラの寄木造という。

遊戯(ゆげ)坐像とよばれるゆったりした座り姿である。すなわち、左足をおろし、右足を前にはずして座る。右手は後ろ手についてくつろいでいるような様子で、これは宋から元にかけて流行した姿勢であり、日本では13世紀後半から14世紀前半、鎌倉地方を中心に造られた。

面長で卵形の顔だちが美しい魅力ある像である。

 

 

さらに知りたい時は…

『鎌倉時代造像論』、吉川弘文館、塩澤寛樹、2009年

『禅の源流』(展覧会図録)、東京国立博物館、2003年

『鎌倉大仏と阿弥陀仏信仰』(展覧会図録)、神奈川県立金沢文庫、2002年

『頼朝と鎌倉文化』(展覧会図録)、佐野美術館、1991年

『静岡県の文化財ー彫刻』、静岡県教育委員会文化財課、1978年

 

 

仏像探訪記/静岡県

観音菩薩像
観音菩薩像