西蓮寺薬師堂の仏像
年間9日間開扉

住所
行方市西蓮寺504
訪問日
2025年9月30日
この仏像の姿は(外部リンク)
西蓮寺ホームページ・西蓮寺について
拝観までの道
行方(なめがた)市は茨城県南東部にあり、霞ヶ浦と北浦にはさまれた地域にある。西蓮寺は市の北西部にある。
鉄道が通っておらず、土浦、石岡、鉾田など近隣の市からバスがあるが、西蓮寺の近くは通らない。お寺の西には「西蓮寺入口」という行方市営バス(玉造コース)の停留所があるが、平日のみで本数も少ない。
筆者は、土浦駅西口からの関東鉄道バス(霞ヶ浦広域バス)で「玉造庁舎前」まで行き、その近くにあるタクシー会社でタクシーを頼んで向かった。2500円弱であった。帰りは同じバスの「玉造中学校下」というバス停まで歩いた。1時間くらいだったと思う。
霞ヶ浦の周辺はサイクリングが盛んで、周辺にはいくつかレンタサイクルのスポットがあるので、それを借りるというのもありかもしれない。
薬師堂の本尊、薬師如来像は秘仏で、1月8日、4月8日と9月24日から30日まで、合わせて年間9日間開帳される。
筆者が訪れたのは7日間続く秋のご開帳(この期間、お寺では常行三昧会というご法要を行なっている)の最終日、9月30日の9時半ごろだった。この日の開帳は午前のみで終了になるとのこと。11時に堂内でご祈祷があり、そのあと行列が出て、閉帳の運びとなるとのことだった。ご祈祷中は拝観不可となる。他の日のスケジュールはまた違うかもしれないので、お問い合わせてお出かけになるとよいと思う。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれなど
天台宗の古刹で、創建は奈良時代末期。最澄のお弟子さんの最仙というお坊さんが開いたと伝える。薬師堂本尊の薬師如来像は平安時代後期ごろの作である。
鎌倉期に中興されたといい、境内に立つ相輪橖(そうりんとう)はその時代の遺品で、元寇の撃退を記念して建てられたものと伝える。仏塔の一種で、高さは9メートル以上もあり、形は錫杖のような姿、木心に銅を巻いて作られている。天台宗において作られることが多いらしい。といっても現存するものは少なく、比叡山や日光輪王寺に伝わるものが有名で、西蓮寺のものはそれらに並ぶものだそうだ。
山門(仁王門)は室町時代後期の建築。
19世紀後半に大きな火災があり、相輪橖と山門を除く境内の建物はその後の再建である。
拝観の環境
薬師如来像は薬師堂背面に接続する耐火のお堂に安置されている。薬師堂の中からの拝観。やや距離があるが、よく見ることができる。
薬師如来像の印象
像高約150センチの坐像。堂々たる半丈六像であるが、親しみやすい姿が魅力的である。割矧ぎ造で、樹種はカヤという。
肉髻はとても大きく、印象的である。螺髪の粒は小さく、よく揃う。丸顔で、目鼻口は中央に寄り、伏目がちで、優しい表情に見える。
上半身を大きくつくり、脚部は高く、なかなかの存在感をあらわす。衣のひだはややぎこちないが、しっかりと刻まれる。
釈迦如来像、阿弥陀如来像について
薬師堂内の左右の間には十二神将像が6体ずつ安置され、その前に阿弥陀如来坐像と釈迦如来坐像が置かれている。像高は85センチ強。玉眼。像高が揃い(阿弥陀如来像の方が若干高いが)、雰囲気も似るので、一具かとも思われる。ただし釈迦如来像は割矧ぎ造、阿弥陀如来像は寄木造。樹種はヒノキ。
釈迦如来像の像内に銘文があり、読めないところも多いが、幸い年月日は読み取れる。また「薬師」の文字や、僧として長円、祐円といった名が見える。年は1253年を示す。「薬師」とあるので、本来は薬師如来像であったのかもしれない。
ややクセのある顔立ちである。肉髻は低く、螺髪の粒は大きめで1粒ごとに右巻きに渦を巻く。髪際は正面でカーブする。額を広く取り、眉は高々とは上げず、目は細めに見開く。顔は左右対称が崩れているように感じるが、光の具合だろうか。人中を浅く刻むところなど、写実性を重視した造形にも思えるが、それを超えた神秘性が表れているようにも感じられ、不思議な魅力がある。口は小さくあらわす。頭部は下向き加減とする。
胸、腹のボリュームはあまり感じられない。安定感のある座り姿といえる。衣のひだはしっかり刻まれている。衣の重なりや折り返しがやや煩雑に感じられる。
一方、向かって左側の間に安置される阿弥陀如来像は、釈迦如来像よりも端正な姿につくられている。伏し目がちで穏やかな表情をしている。左胸元のゆらゆらした線がアクセントになっている。
さらに知りたい時は…
『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇 補遺及び第一期総目録』、中央公論美術出版、2010年
『奥州仏教文化圏に遺る宗教彫像の基礎的調査研究(東國乃仏像)』、有賀祥隆(研究代表者)、2006年
『茨城彫刻史研究』、後藤道雄、中央公論美術出版、2002年
『茨城の仏教美術 鎌倉・室町時代の仏像と仏画』(展覧会図録)、茨城県立歴史館、1996年
→ 仏像探訪記/茨城県