大蔵寺の千手観音像

  像高4メートル、平安前期一木造の大作

住所

福島市小倉寺字拾石7番地

 

 

訪問日 

2006年8月17日、  2013年8月30日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

福島県観光情報サイト・ふくしまの旅

 

 

拝観までの道

大蔵寺(だいぞうじ、小倉寺観音)は、福島駅東口からJRバス川俣線に乗る。南方へ約10分、「小倉寺」下車。バスの本数は多いとはいえないので、事前に調べておく方がよい。

 

JRバス東北ホームページ

 

下車後は、バス進行方向左前方の丘へと進む。

バス停の南数十メートルのところに「小倉寺観音入口」の看板が出ているので、車であればここから入る。徒歩ならばここで曲がらず、次の信号で左折、100メートル余り行くと左側に細い上り坂の参道があるので、そこを入る。国道114号を陸橋で渡り、さらに上っていく。バス停から徒歩15分弱。

拝観は、事前連絡が望ましい。

 

 

拝観料

1人500円だが、2人以上だと1人300円

 

 

お寺や仏像のいわれ

大蔵寺は今は臨済宗だが、もとは天台宗であったらしい。かつては阿武隈川の西岸にあり、いつの時代にかこの東岸の丘に移って来たという。

千手観音像の高さは約4メートルあり、これだけの巨像をもってくるのは容易なことではなかっただろうと思う。カヤの一木造で、10世紀ころの作。

 

 

拝観の環境

千手観音立像は、寺域の一番奥にある収蔵庫(宝蔵殿)に安置されている。収蔵庫はやや狭いが、開けた片扉より光が入り、とても見やすい。また仏像の背面(光背は失われている)に少し隙間があり、後ろを回って見てもよいとのこと。仏像彫刻の前に立つと、できれば横や後ろも見たいと思うので、これはうれしい。

 

 

仏像の印象

千手観音像の顔は目鼻立ちがはっきりしていて、威厳と素朴さを合わせ持つ。分厚い腿(もも)など、木彫の魅力に溢れている。両足の間に渦巻きの文様があり、膝下の衣文には翻波(ほんぱ)式が見られるなど、平安前期彫刻の特色を示す(渦巻きの文は背面、肩の下にも見られる)。

 

ただし、下肢はかつては相当に痛んでいたようで、かなりが後補にかわっている。幸いなことに左のもも、その下すぐの衣文、両足の間の渦巻きの文は当初のものであり、後補部もそれらにならって補われている。

肩より先の部分、つまり大きな前の4本の腕とその後ろの腕(脇手)も後補らしい。確かに脇手はずいぶん細く、バランスを欠くようにも思う。また、前の4本の腕も平板な感じは否めない。もし腕が他の平安前期の千手観音像のように太くもじゃもじゃとついていたら、どれほどの迫力であったであろうか。天衣も肩のところで切れてしまっているのが惜しまれる。頭上面も後補が多いが、3つほど古いものがあるとのこと。

 

顔は小さめで、目を大きく見開き、口をしっかりと結び、あごをしっかりとつくる。顔つきはどことなく人間味を感じさせ、怒り肩、丸く出たお腹など、素朴で力強い魅力がある。

 

 

その他1

千手観音像の周りには、破損した一木造の仏像が20体ほど保存されている。太い腿や大きくせり出したお腹をもつ像もあり、やはり平安前期彫刻らしい特色がうかがえ、よく見ていくとそれぞれに個性があって、魅力的である。

これほどの数の像の存在から、平安時代、このあたりは重要な地域であったということがわかる。

 

 

その他2

収蔵庫へとあがっていく途中に、観音堂とその後ろの奥之院がある。奥之院は土蔵のつくりをした珍しい塔で、江戸時代の建物。千手観音像はもと、ここにまつられていたそうだ。

観音堂はこのお寺の本堂にあたる建物で、本尊はやはり平安時代の聖観音像である。秘仏で、春の例大祭(4月の第3日曜日らしい)で開扉されるとのこと。

 

 

さらに知りたいときは…

「ほっとけない仏たち 福島(三)」(『目の眼』468)、青木淳、2015年9月

『仏像ー祈りと風景』、長岡龍作、敬文舎、2014年

『みちのくの仏像』(『別冊太陽 日本のこころ』200)、平凡社、2012年10月

『仁王』、一坂太郎、中公新書、2009年

『ふくしまの仏像ー平安時代』、若林繁、歴史春秋出版、2002年

『大蔵寺』(お寺発行のパンフレット)、2001年

『福島の文化』(『福島市史』別巻7)、福島市教育委員会、1999年

『祈りのかたち』(展覧会図録)、東北歴史博物館、1999年

『福島県立博物館調査報告』24、福島県立博物館、1993年

『仏像を旅する-東北線』(『別冊近代の美術』)、佐藤昭夫編、至文堂、1990年

『中通りの仏像』(展覧会図録)、福島県立博物館、1989年

『解説版 新指定重要文化財3、彫刻』、毎日新聞社、1981年

「勝常寺と大蔵寺の諸尊」(『仏教芸術』85)、倉田文作、1972年

 

 

仏像探訪記/福島県