八剱神社の不動明王像
年2回開扉

住所
平塚市下吉沢71
訪問日
2012年1月28日、 2025年9月28日
この仏像の姿(外部リンク)
拝観までの道
平塚市の西部、下吉沢(きっさわ、きちさわ)にある八剱(やつるぎ)神社の境内下に収蔵庫があり、不動明王像(平安時代後期)が安置されている。
普段は扉を閉ざし、年2回開扉。1月28日と9月28日の午前10時から午後3時と決まっているようだ。ただし、変更の可能性もあるかもしれないので、まずは上記の平塚市の文化財のページを見ていただくとよい。
問い合わせは平塚市教育委員会社会教育課。
交通は、平塚駅北口か二宮駅南口から神奈川中央交通バスで「松岩寺」下車。バス便は平塚駅からの方が多い。下車後、南へ100メートルほどのところにご開帳の日はのぼりが出ているので、そこから細道に入る(西へ向かう)。道をあがってゆくと、右側に収蔵庫がある。「松岩寺」バス停から5分くらいで着く。
拝観料
特に拝観料等の定めはなかった。
お寺や仏像のいわれなど
不動明王像は、通称「かんまん不動」あるいは「がんまん不動」と呼ばれる。
もと里から1キロ半ほど離れた丘陵の不動堂にあったそうだが、この堂が山火事で類焼し、仏像は助け出されて、麓の大光寺で移された。
近代初期に大光寺が廃されると、この下吉沢の八剱神社の境内で保管されることになった。その後、関東大震災での被災、さらには盗難にあって、本像はかろうじて取り戻されものの、脇侍の二童子像はついに見つかっていない。
この事件にあと、より安全な近くの松岩寺に移されるとともに、八剱神社を所有者として文化財申請され、国宝(戦前の旧国宝、現在は重要文化財)指定された。
しかしその後、ふたたび盗難騒ぎがあったため、今は八剱神社の境内下に設けられた立派な収蔵庫がつくられ、移されている。
拝観の環境
ご開帳の日の午前中にうかがったところ、テントで拝観受付が行われ、地元の方が訪れては、手を合わせて行く。信仰厚いお不動さまである。
収蔵庫の入口からの拝観だが、像までの距離が近く、外の光が入って、よく拝観できた。
仏像の印象
像高は1メートル弱の立像。比較的小ぶりな像で、収蔵庫の中で厨子に収まる。ヒノキの一木造。
片方の目をすがめ、口をゆがめた、「十九観」の不動明王像である。しかし、その表情は、鋭さがなく、素朴な感じがする。地方作の味わいと、里から離れた小堂に置かれていた時期が長かったこと、盗難にもあっていることから、表面がやや荒れてしまっているためなのかもしれない。
このために、事前に写真を見た印象では、どちらかというと鈍重な感じの像なのかなと思っていたが、実際に見るとなかなかきりりとして、端正、優美な像だったので驚いた。
顔は小さめで、プロポーションがよい。丸顔、おちついた顔立ちで、顎はしっかりとつくる。髪は中央から左右に流れる。髪を巻くアクセサリーの飾りも可愛らしい。
いかり肩で、両腕とも肘を外側に向ける。ほぼ直立だが、よく見ると腰を向って左に引いてひねっている体勢のようである。胸や腹は横から見えないのが残念だが、厚みがありそうである。衣は短めで、足首を出す。
腕、手、足首にアクセサリーを着け、華美というほどではないが、入念な造像と感じる。
さらに知りたい時は…
『平塚の仏像』(『平塚市文化財研究叢書』4)、平塚市教育委員会、1991年
『神奈川県文化財図鑑 彫刻篇』、神奈川県教育委員会、1975年
『日本彫刻史基礎資料集成 平安時代 造像銘記篇』8、中央公論美術出版、1971年
『平塚市文化財調査報告書』第1集、平塚市教育委員会、1960年