三嶋神社の薬師如来像

毎月12日に開扉

住所
大井町上大井331


訪問日 
2025年6月12日


この仏像の姿は(外部リンク)
三嶋神社・重要文化財



拝観までの道
足柄上郡大井町(おおいまち)にある三嶋神社は、御殿場線の上大井駅下車、西南に徒歩約10分。
薬師如来像は、本殿に向かって右側の小さなお堂(薬師如来堂)の厨子中に安置されている。普段は厨子の扉は閉まっており、毎月1回、12日の日中(9時ごろから16時ごろ)に開扉され、拝観できる。


拝観料
特に拝観料等の設定はなかった。


神社、仏像のいわれなど
三嶋神社は静岡県三島市の三嶋大社より分霊を受け、源氏、足利氏、後北条氏などの武家からも大切にされ、またこの地域の中心的な神社として信仰を集めてきた。
三嶋大社は大山祇(おおやまづみ)神、事代主(ことしろぬし)神を三嶋大明神としてまつっており、三嶋神社も同じ2神をまつる。薬師如来はこれらの神さまの本地仏とされ、この社に伝来する薬師如来像は神仏習合の遺例としても重要である。近代初期の神仏分離、廃仏を超えて今日まで神社で長く大切にまつられてきた仏像という点においても、大変貴重な像である。


拝観の環境
薬師如来堂の正面はガラスの入った格子戸で、扉口からガラス越しの拝観となる。
筆者がうかがった6月12日は年1度の薬師如来祭の日であり、この日の10時半過ぎに着いたところ、ちょうど薬師如来祭が終わったばかりで、ガラス戸が開け放されており、とてもよく拝観することができた。


仏像の印象
像高約110センチの坐像。等身大よりも大きく、半丈六に近いスケールの像である。ヒノキと思われる針葉樹の寄木造、玉眼。右手はてのひらをこちらに向け、左手は下げて薬壺をとる、通例の薬師如来の姿をしている。
鎌倉時代の作。古くは運慶作と伝わっていたそうだが、実際には運慶の時代よりも少しあとの頃の作のようである。
像内には漆箔のあとがあり、像内も美しく荘厳された入念の作である。頭部内および納入の銘札に江戸時代前期の修理についての記録がある。

肉髻は小さめで、自然な盛り上がりを見せる。螺髪の粒も小さめ。
額は広めに、顎は反対に小さめに作られている。若干クセのある顔立ちで、目はつり気味に、眉は高々とは上げず、鼻筋は通り、小さな口、口もとは引き締めている。ほおは卵を思わせるようなつるりとした輪郭を描く。
体部は長めにつくられ、胴のところで引き締める。
衣は重なり合いや変化のあるひだがつくられ、複雑に反転したり、折れたりしている。左肩にかかる衣の折れ曲がりが印象的である。ひだは等間隔にならないようにして、枝分かれをつくるなど変化に富んでいる。


さらに知りたい時は…
『足柄の仏像』(展覧会図録)、神奈川県立歴史博物館、2023年
『神々と出逢う』(展覧会図録)、神奈川県立歴史博物館、2006年


仏像探訪記/神奈川県