伏見寺の阿弥陀如来像

  平安前期の金銅仏の優品

住所

金沢市寺町5-5-28

 

 

訪問日 

2009年4月18日

 

 

 

拝観までの道

伏見寺(ふしみじ)は金沢駅の南、約3キロにある。

最寄り駅は北陸鉄道石川線の終点野町駅で、徒歩10〜15分。または金沢駅東口7、8、9番の乗り場からのバスで「広小路」下車。

本尊は小金銅仏の阿弥陀如来像で、本堂奥の厨子中に安置され、拝観をお願いすると開けてくださる。ただし、法要等で不可の場合もあるので、事前に確認して出かけるのがよい。

 

 

拝観料

300円

 

 

お寺のいわれ

伏見寺があるあたりは、何十というお寺が軒を並べる寺町地区である。前田氏が金沢を城下町として整備する際にこのようにお寺を集めたとのこと。伏見寺も元は離れた場所にあったが、移されて来たという。

 

伏見寺は町の中の小さなお寺ながら、伝説に彩られた寺院である。

寺伝によると、本尊の阿弥陀如来像は芋掘(いもほり)藤五郎ゆかりの像という。

藤五郎は清廉な人物で、神仏の加護を受け、芋を掘るごとに砂金を得る。これを洗った泉から金沢の地名がおこったといい、またそのようにして得た金から仏像をつくった、あるいはその死後に遺徳を慕うものが仏像をつくりその胎内に藤五郎が得た金でつくった小像を納めたなど、さまざまに伝えられる。

こうして造られた阿弥陀如来像は行基によって開眼供養をされたといい、寺の山号も行基山と称する。また、境内には藤五郎の墓があり、戦前に発掘したところ藤五郎が使ったという鉄器の残欠が見つかったそうで、これも本堂内に箱に入って展示されているのも面白い。

 

 

拝観の環境

ガラス越しだが、近い距離からよく拝観できる。

 

 

仏像の印象

像高はわずか20センチ余りながら、強い存在感を示す像である。

頭部を大きめにつくるのは小金銅仏では珍しいことではないが、白鳳期の像のように若々しい感じが前面には出ず、威厳ある表情である。

顔や上半身は四角ばっている。螺髪は美しく整えられている。胸は張りがあり、側面観はいかにも厚みがありそうである。衣の線もくっきりしていて、煩雑というほどでないが、かなり細かく隙なくつくられている。左の腕から下がる衣の端が膝頭にかかっている。膝も張りは十分で、衣を通してふくらはぎの豊かな肉付きを感じることができる。左足を上にして足を組むが、その左足も大きく、存在感がある。

手は胸前で組んでいる。説法印である。腕から指の各関節も曲がりも中途半端なところはひとつもなく、指も力強い。

頭頂部から膝までの像全体の三角形がここちよい緊張感を出す。

 

 

その他

脇堂の不動明王坐像は地方作らしい豪放な木彫像である。

 

 

さらに知りたい時は…

『仏像を旅する 北陸線』、至文堂、1989年

『金銅仏』(『日本の美術』251)、鷲塚泰光、至文堂、1987年4月

「平安時代の金銅仏」(『MUSEUM』215)、倉田文作、1969年2月

 

 

仏像探訪記/石川県