冷泉寺の千手観音像

大きく開いた脇手が魅力的

住所
近江八幡市千僧供町252


訪問日 
2020年2月8日


この仏像の姿は(外部リンク)
冷泉寺・十一面千手観世音菩薩立像



拝観までの道
冷泉寺は近江八幡駅南口よりバスで約10分、「長福寺」下車、南へ徒歩3分。
本尊の千手観音像は事前連絡で拝観することができる。


拝観料
志納


お寺や仏像のいわれなど
この地域では唯一の曹洞宗寺院だそうだ。17世紀後半に美濃国から満庵という禅僧が来て、この寺を曹洞宗寺院として開山したという。
しかし、この寺院には7体の平安時代の仏像が伝来し、前身となる寺院があったことは確実である。
伝えによれば、行基が蔓陀羅坊という寺院を創立したという。平安時代前期に疫病が流行した際、この寺院に1000人の僧侶が集められ祈祷供養を行ったところ、病魔は退散した。これが冷泉寺の所在地である千僧供町の名前のおこりという。

17世紀後半に寺は信長に焼かれたが、村人が7体の仏像を隠し、守ったと伝える。
これらの像が現在まで伝来するが、薬師如来像と地蔵菩薩像は琵琶湖文化館に、四天王像4躰は京都国立博物館に寄託されている。


拝観の環境
本尊千手観音像は、本堂壇上の厨子中に安置される。堂内で拝観させていただける。


仏像の印象
千手観音像は像高約110センチの立像。一木造で樹種はヒノキという。
ほぼ直立する。小顔で、とてもやさしい表情である。衣は浅い彫りながら、条帛の端や大きく折り返す裙、腰布など、とても美しい姿をしている。
脇手は、正面で合掌する手や鉢をとる手と同じ大きさで、なかなかダイナミックな広がりを見せる。それによって像を大きく見せている。

穏やかな顔立ちと浅いひだの刻み方から、基本的には平安時代の後期の優美な姿の像と考えられる。しかし、一木造であることと、脇手が個性的で定型化されていないのは、古風な特色ともみられる。豊かで面白い像と思う。


さらに知りたい時は…
『かんのんみち』、上原昭一、朝日新聞社、1976年


仏像探訪記/滋賀県