西明寺の本堂の千手観音像

立像、坐像の2躰、いずれも鎌倉時代の作

住所

益子町益子4469

 

 

訪問日 

2020年11月1日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

西明寺 重要文化財・行事

 

 

 

拝観までの道

交通は真岡鉄道の益子駅下車。駅前からタクシーを使うと1500円程度。

駅の東、1キロ強のところに「城内坂」という交差点がある。ここから東側には益子焼のお店が軒を連ね、観光客が多く訪れるエリアとなる。西明寺へは城内坂交差点から南東に進む。

タクシーを使わない場合、「城内坂」までバス(関東自動車、益子駅から宇都宮駅方面行き)で行き、あとは徒歩となるが、バスの本数は少なく(平日と土曜は1時間に1本くらいだが日曜日はさらに少ない)、お寺までおよそ2キロ半くらいで、最後は上り坂となる。

 

お寺の入口に休憩所・納経所があり、本堂内拝観は納経所で申し出る。

拝観は事前予約制でないが、念のため電話していくのがよいかもしれない。

 

 

拝観料

300円

 

 

お寺や仏像のいわれなど

西明寺(益子観音)は真言宗寺院。坂東の札所(20番)として信仰を多く集める寺である。また、門前に在宅医療や介護事業の拠点を備えるユニークなお寺としても知られる。

 

奈良時代草創と伝え、平安時代後期には荒廃したが、平安時代末期から鎌倉時代にかけてこの地の有力御家人である宇都宮氏などによって再興された。南北朝の動乱期に焼失したが、室町時代に益子勝直、江戸時代には平野亦市によって堂宇が再建された。

 

 

拝観の環境

石段を上がった先に楼門と三重塔があり、門をくぐると右に閻魔堂、正面が本堂になっている。

本堂は内外陣が格子によって仕切られた密教本堂の形式で、内陣で拝観ができる。

堂内は秘仏の本尊厨子を中央にして、その前にはお前立ちの十一面観音と勢至菩薩像、不動明王像、向かって右側に延命観音像、馬頭観音像、如意輪観音像、毘沙門天像が、向かって左側には千手観音坐像、千手観音立像、准胝観音像が立ち並ぶ。

像は近年の修復で美しく整えられている。馬頭観音像の下肢の衣のつくりなど自然で堂々としている。毘沙門天像は頭部が失われているが、きりりと引き締まった体躯が格好いい。

堂内はライトもあり、よく拝観できる。

 

 

仏像の印象

千手観音立像は像高約180センチ、ヒノキの寄木造、彫眼である。面長で、どちらかと言えば四角張った顔をしている。口もとはぐっと引き締めて威厳をあらわす。眉やまぶた、ほおにかけては深い彫りの顔立ちをあらわす。上半身は長く、あまり肉付きの抑揚をつけないがゆったりとして、おもむきがある。下半身の衣の流れる線はやや変化に乏しく、形式化がみられる。

像内(足の方)から銘札が見つかり、1261年の作とわかっていることは貴重である。

 

一方、千手観音坐像は像高約1メートル。ヒノキの割矧ぎ造、彫眼である。

制作時期は千手観音立像とほぼ同じか、それよりも前と考えられるが、作風はかなり違う。

まるまるとした顔立ちに、大きな頭上面がつく。額が小さく、その分目や眉が顔の上半分につまっているように感じられる。目の下、頬骨のあるあたりが強く膨らんで、丸味を帯びた顔つきである。口は小さめだが、上唇がめくれるようにつくられているのが、肉感的な感じがある。鼻はやや小さめ。

上半身は堂々として、下肢は体の線の抑揚がよくでている。衣の線は多く刻まれ、美しい。胸前で構えた合掌手は手先が斜め前方を向き、豊かな雰囲気を出している。

 

 

さらに知りたい時は…

「西明寺の千手観音(ほっとけない仏たち48)」(『目の眼』519)、青木淳、2019年12月

『栃木県の仏像・神像・仮面』、北口英雄、随想舎、2019年

『益子西明寺に伝わる木彫群 : 解躰修理と復元の記録』、仏教造形研究所編、2001年

『下野の仏像 祈りの造形』、栃木県立博物館、1989年

 

 

仏像探訪記/栃木県