古川薬師安養寺の平安仏

春秋の彼岸などに開扉

住所
大田区西六郷2-33-10


訪問日 
2024年2月8日


この仏像の姿は(外部リンク)
東京都文化財情報データベース・阿弥陀如来像
東京都文化財情報データベース・釈迦如来像



拝観までの道
多摩川下流の河川敷のすぐ近くにある。最寄り駅は京浜急行線の雑色駅で、西へ徒歩約15分。東急多摩川線の矢口渡駅からも歩ける距離(南へ徒歩約25分)。

このお寺には平安時代の3体の如来像が伝来している。薬師堂(収蔵庫)に安置され、普段は扉がしまっているが、2月8日、4月8日、春秋の彼岸に開扉されるという。時間は10時から。早めに閉めてしまうこともあるため、午前中に行くのがよいようだ。


拝観料
特に拝観料等の設定はなかった


お寺や仏像のいわれなど
真言宗寺院。奈良時代に行基が草創したと伝える。
江戸時代の史料によれば、16世紀に永伝という僧が中興したという。伝来する3体の如来坐像には江戸時代初期(1612年)の修理銘が記されており、このころまでに再興が進んだのであろう。
また、江戸時代前期から中期にかけては栄弁という僧が出て、さかんに諸堂、諸仏像の造立、整備を行った。その甲斐あってか、古川薬師は江戸近郊散策の名所として、近くの池上本門寺や川崎大師とともに広く知られていたらしい。

3体の如来像は平安時代後~末期の作で、薬師堂に安置されている。およそ10年間の計画で修復が行われいて、阿弥陀如来像、釈迦如来像は完了し、現在は薬師如来像が修復に出ている。来年(2025年)には終了し、お戻りになる予定とのこと。


拝観の環境
堂内で拝観させていただける。


仏像の印象
中央の薬師如来像がやや大きく像高160センチ台、左右の釈迦如来像、阿弥陀如来像が150センチ台である。いずれも寄木造で、材はヒノキという。
3体がもともとセットであったのか、別々のお堂の本尊として伝来していたものかはわからない。

阿弥陀如来像は向かって左側に安置される。丸々としたお顔立ちが印象的である。肉髻は高く、螺髪の粒は小さい。目は半眼とし、穏やかな表情である。口は小さいが、正中線から若干のずれがあるように感じられる。
ややなで肩で、上半身は大きくつくり、胸はゆったりとふくらむ。座り姿も落ち着きがある。

向かって右側の釈迦如来像は、どちらかというと四角張った顔立ちで、阿弥陀如来像とは印象が異なっている。現在修復中の薬師如来像は、こちらの釈迦如来像と共通するところが多いらしい。
目は見開き、鼻口も大きめにつくる。衣のひだも素朴な表情を見せている。左足を上にして足を組む。


その他
左右の端に二天像が置かれている。如来像と同時代だが、頭部は後補。
このほか、堂内には日光・月光菩薩像(薬師如来像の脇侍)や十二神将像(ただし8体のみ)などが安置されている。


さらに知りたい時は…
『大田区史』中巻、大田区史編さん委員会、1992年
『大田の史話』その2、大田区史編さん委員会、1988年


仏像探訪記/東京都