長興寺の聖観音像

  4月第2日曜日に開扉

住所

田原市大久保町岩下8

 

 

訪問日 

2008年4月13日

 

 

 

拝観までの道

長興寺(ちょうこうじ)は、愛知県東部の豊橋から西に長く伸びる渥美半島にある。

東国に多い、鑿(のみ)の痕を残した像、鉈彫仏がこの寺にあり、毎年4月の第2日曜日(4月10日に近い日曜日)に公開されている。

交通は、新豊橋駅から豊橋鉄道渥美線で終点の三河田原駅へ、そこから豊鉄バス伊良湖線で8分、「大久保」というバス停で下車すると、寺の看板が出ている。バス停から北へ300メートルくらい歩くと着く。 

 

豊鉄バス

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺や仏像のいわれ

長興寺は鎌倉時代に天台宗寺院として創建され、その後衰退、室町時代中期に在地領主の戸田氏が復興した際に曹洞宗に転じた。

聖観音像は寺の草創より古い平安末期の作と考えられるが、この寺院にまつられる以前は寺の奥の山のお堂にあったという伝えがあるほか不詳である。

現在は門を入って左手の収蔵庫に安置されている。

 

 

拝観の環境

収蔵庫の中まで入れていただけるので、間近で、また背面や側面からもよく拝観することができる。

 

 

仏像の印象

像高110センチほど。カヤかと思われる材を用いた一木造の立像で、顔や上半身は大きく、下半身は細く短く表されている。やや体が傾くが、地方的な造像の素朴さによるものか、あるいは特別な霊木を用いたからであろうか。横の縞をつくる鑿痕の模様は規則正しいが、強さは感じられず、鉈彫り彫刻としては後半に属すものと思われる。

顔の大きい造形は全体の印象としては可愛らしいが、目はつりあがり、威厳を感じさせる。しかし、下から、あるいは斜めからと角度を変えると優しい顔つきにも感じられ、また長く拝観しているとさまざまな表情が読み取れるようにも思える。地方の素朴な像の魅力に溢れている

ただし、足先など後補部分は多いようだ。

 

 

その他

観音像が開扉される4月第2日曜日には、境内で地域の方が甘酒やお茶で来訪者をもてなしてくださる。

 

 

さらに知りたい時は…

「ほっとけない仏たち」20(『目の眼』485)、青木淳、2017年2月

『愛知県史 別編 文化財3 彫刻』、愛知県史編さん委員会、2013年

『地方仏を歩く』3、丸山尚一、日本放送出版協会、2004年

『仏像集成』2、久野健編、学生社、1992年

 

 

仏像探訪記/愛知県