成願寺の十一面観音像

  モダンなお堂と平安仏

住所

名古屋市北区成願寺2−3−28

 

 

訪問日 

2010年9月12日

 

 

 

拝観までの道

成願寺(じょうがんじ)は、名古屋市の北部。矢田川(庄内川支流)の南岸にある。

交通は、市営地下鉄の上飯田駅、志賀本通駅、黒川駅からそれぞれ徒歩25分〜30分くらい。

本尊の十一面観音像の拝観は、事前連絡が必要。

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺やのいわれ

天台宗の寺院。行基草創と伝え、山田重忠によって中興されたという。

重忠は鎌倉前期の武将、承久の乱で後鳥羽上皇方につき奮戦するが自害。信仰厚く、領内にいくつもの寺院を建立したことでも知られる。

以前は少し北にあったが、20世紀前半に河川の改修工事にともなって現在地に移転して来た。その時つくられた本堂が老朽化し、2009年が重忠の中興から800年という節目の年ということで、本堂が建て替えられた。

このお堂が一般に想像する寺院の建築からはかなりかけ離れた実にモダンな建物で、建築の賞も受けている。

 

 

拝観の環境

本尊はもともと秘仏だったそうだが、現在は法事や事前連絡による拝観の際には厨子の扉を開けてくださる。

新しい本堂は水に浮かんでいるかのようで、またガラスを多用し、空を取り込んでいるような明るい建物である。それと平安時代の仏像は不思議とよくマッチしている。

 

 

仏像の印象

本尊十一面観音像は、古様を残す一木造の仏像で、名古屋に残る仏像中最も古いもののひとつとされる。

像高は約165センチの立像で、針葉樹材(カヤか)。。

 

スタイルよく、下半身が長い。右手もすらりと伸び、肩からの天衣がゆらゆらとかかる。

右足を少し遊ばせ、それにともなってわずかに腰をひねり、裙の折り返しが揺れる様子が控えめにあらわされている。退化した渦巻のような衣の文や下肢の翻波式衣文の名残りは古い様式を受け継ぐものだが、全体に襞(ひだ)の彫りは浅い。

顔はやさしく、また素朴さを残し、親しみを感じる。

左手の肘から先や両足先などは後補。

 

 

さらに知りたい時は…

『愛知県史 別編 文化財3 彫刻』、愛知県史編さん委員会、2013年

『比叡山と東海の至宝』(展覧会図録)、名古屋市博物館、2006年

『新版 名古屋の文化財』上、名古屋市教育委員会、1996年

『名古屋の史跡と文化財』、名古屋市教育委員会、1990年

 

 

仏像探訪記/愛知県