大宝寺本堂の諸仏 

  3月28日にお堂を開扉

住所

松山市南江戸5-10-1

 

 

訪問日

2009年3月28日

 

 

この仏像の姿(外部リンク)

松山市ホームページ・国指定文化財

 

 

 

拝観までの道

大宝寺(だいほうじ)は松山駅下車、西に20分ほどのところにあるお寺である。

本堂は毎年1回、3月28日に開扉されるので、この日だけはあがって参拝することができる(なお、その他の日も事前にお願いすれば拝観可能らしい)。

 

 

拝観料

特に拝観料等の設定はなかった。

 

 

お寺のいわれなど

古代草創と伝えるが、創建時の事情等不詳。本堂は鎌倉時代のもので、愛媛県でもっとも古い建築として国宝指定されている。

本堂前にはうば桜(エドヒガンザクラ)が枝をみごとにひろげている。ラフカディオ・ハーンの『怪談』にもとりあげられた伝説のある有名な桜の木で、毎年このご開扉の時期に咲くのだそうだが、筆者が訪れた2009年は開花が早く、ほとんど葉桜となっていた。

 

 

拝観の環境

堂内は明るく、すぐそばに寄ってよく拝観できた。

 

 

仏像の印象

本堂では5躰の仏像を拝観できる。

中央には半丈六の阿弥陀如来像が厨子の前に安置されている。もとは厨子中に秘めた仏で、お寺では薬師如来とお呼びしていたそうだが、来迎印を結んでいて、現在は阿弥陀如来像として重要文化財指定されている。衣が実に流麗でゆったりとすわる本格的な定朝様の仏像で、ほれぼれするほど整った像である。肉髻は高く、髪際は一文字。

 

本尊の両脇には一木造の破損仏が安置され、そのさらに左右、斜めうしろに釈迦如来像と阿弥陀如来像の2躰の坐像がある。

阿弥陀如来像は像高70センチ弱。一木造。黒々とした姿の迫力ある像である。

地髪部から肉髻への移行がゆるやかで、髪全体がニット帽をかぶったように見える。螺髪は大きめ。顔の造作は中央に集まって、力強さを感じる。怒り肩に近く、胸は豊かで、衣を通肩に着て、その襞(ひだ)はなかなか細かい。本尊像のような如来の完成形が出来上がる前のつくりという印象の像である。下半身の衣の線も緊張感がある。

こうした独特の仏像の造像年代を考えるのはなかなか難しい。頭や髪、衣の様子は平安前期彫刻に通じるが、落ち着きのある造形でもあり、ややあとのものと考えるべきか。一方、思い切って奈良時代までさかのぼらせる説もある。

 

釈迦如来像は像高80センチ余りで、白木の仏像である。一木造。螺髪はやはり大きめで、ニット帽のような頭の形は阿弥陀如来像と同様だが、上半身が高いのが特徴的である。衣の襞もなかなか鋭いが、上半身では左肩から腹にかけて襞を刻まず、不思議な印象である。仏師というよりも修行者のような位置にある者によって彫られたのではないかといった想像ができそうである。

注目すべきは、胸や腹に節のあとが見えることである。彫刻に向かないこのような材をわざわざ用いたのは、相応の理由があったと思われる。おそらく霊木とされた木を用いて仏像を彫ったからではないかと考えられる。

 

 

その他

四国八十八カ所霊場の第44番に同名の大宝寺というお寺があるが、別寺院である。

 

 

さらに知りたい時は… 

『続 古佛』、井上正、法蔵館、2012年

『ふるさとの仏像をみる』、内田和浩、世界文化社、2007年

『平城の爛熟』(『人間の美術』4)、梅原猛・井上正、学習研究社、2003年

『芸術新潮 特集・謎の仏像を訪ねる旅』、1991年2月

『愛媛の文化財』、愛媛県教育委員会、1982年

『解説版 新指定重要文化財3 彫刻』、毎日新聞社、1981年

 

 

仏像探訪記/愛媛県