西方寺の阿弥陀如来像
快慶前半生の麗しき阿弥陀像

住所
山添村大字広瀬225
訪問日
2025年3月26日
この仏像の姿は(外部リンク)
ブックカフェひろせ・西方寺
拝観までの道
山添村は奈良県北東部にあり、西と北は奈良市、南は宇陀市、東は三重県伊賀市、名張市と接する。地形は全体的に高原地帯で、鉄道は通らず、バス便も限られる。
西方寺のある広瀬地区は山添村の東部で、南流する名張川(木津川支流)の西岸である。西方寺(収蔵庫)は名張川にかかる広瀬橋の西詰にある。
交通は名張駅東口(駅の北にある三十三銀行西側の駐車場)から山添村コミュニティバス大西名張線に乗車し、「広瀬橋」下車。ただし平日のみの運行で、便数も少ない。
拝観はブックカフェひろせに事前連絡すること。
*ブックカフェひろせ
拝観料
500円
お寺や仏像のいわれなど
天台真盛宗の寺院。創建は不明で、元は川の対岸にあり、いつの頃かこの場所に移ったが、近代初期に小学校が設置されることになり、近くに移転したという。その場所には仮堂がまだ残っているそうだ。
その後小学校は廃校となり、保育園となっていた時期もあったが、それも廃園となった。その一方で、西方寺本尊の阿弥陀如来像が足ほぞの銘から快慶作とわかり、故地である今の場所に収蔵庫が作られてそこに移された。
保育園の跡地にはブックカフェひろせが入り、水、土、日、祝日に営業を行なうかたわら、収蔵庫の管理も行なっている。
拝観の環境
収蔵庫内でよく拝観させていただける。側面の様子もよくわかる。
仏像の印象
阿弥陀如来像は像高約1メートルの立像。割矧ぎ造。玉眼。来迎印を結ぶ。現在は全身ほぼ黒々としているが、本来は金泥塗りで、衣には切り金が入っていた。
肉髻は自然な盛り上がりで、螺髪の粒は美しく整う。生え際正面がわずかにカーブする。
額を比較的広くとり、目は涼やかな切れ長、口もとを引き締め、若々しく、また清々しい表情である。実に麗しい像と思う。
上半身はゆったりとして、衣の様子は煩雑さを避け、あくまでシンプルで自然である。ひだは流麗であり、かつしっかりと刻まれている。袈裟を左胸で吊り、そこから細い布を左腕にかけるのは、快慶が生涯に渡って多く制作した三尺の阿弥陀如来立像の中でも本像だけである。
彫刻なので立体的であるのは当たり前ではあるが、本像から受ける立体感は非常に顕著なもののように思える。また、下から見上げるようにして拝観させていただくと独特の浮遊感も感じられる。
足ほぞには「巧匠アン(梵字)阿弥陀仏」と記される。制作年は書かれないが、快慶が法橋となる1203年以前の作とわかる。
またx線により、像内に納入品があることがわかっている。
その他(葛尾観音寺の十一面観音像について)
名張駅と西方寺のある広瀬橋との間に「葛尾(くずお)」というバス停がある。山添村の東南の端で、名張市との境が入り組んだところである。
この葛尾地区にある観音寺はまさに山添村と名張市の境の尾根上にあり、収蔵庫に平安時代後期の十一面観音像を安置する。像高約130センチの立像で、清楚な美しさが感じられる像である。
拝観は5名以上が原則で、拝観料(文化財の維持管理のための協力金)は1人500円。拝観受付及び調整については山添村観光協会が担当している。
*山添村観光協会
さらに知りたい時は…
『仏師快慶の研究』、奈良国立博物館、 思文閣出版、2023年
『快慶 日本人を魅了した仏のかたち』(展覧会図録)、 奈良国立博物館 2017年
『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇』2、中央公論美術出版、2004年
→ 仏像探訪記/奈良県
