久安寺の阿弥陀如来像と薬師如来像
毎月15日に文化財公開

住所
池田市伏尾町697
訪問日
2025年5月15日
この仏像の姿は(外部リンク)
KANSAIええとこ案内・あじさいが彩る久安寺に行ってみた!(阿弥陀如来像)
拝観までの道
久安寺(きゅうあんじ)へは、阪急宝塚線の池田駅前より阪急バス希望ヶ丘四丁目行き、または伏尾台方面行き(久安寺行き)で「久安寺」下車。ただし同じ伏尾台方面行きでも「久安寺」には行かないバスもあり(その方が多い)、その場合は少し手前の「吉田橋」で下車、徒歩約15分(ただし交通量が多い道なので注意)。
久安寺に伝わる寺宝の多くは阿弥陀堂に収蔵されている。
伽藍正面が本堂、左側に三十三所堂(西国三十三所の観音の各霊場の分身ともいうべき33体の観音像をまつっている)というお堂がある。回廊でつながっていて、本堂から行くことができる。阿弥陀堂は三十三所堂の奥にあり、ここもつながっている。
阿弥陀堂は耐火建築で、宝物館を兼ねている。普段は閉ざされており、阿弥陀さまのご縁日である毎月15日の14時から15時まで公開される。ただし8月はお休み。(11月3日など、他にも開く日はあるらしい)
*久安寺公式サイト・祭と年中行事
拝観料
300円(入山)+阿弥陀堂(宝物拝観)200円
お寺や仏像のいわれなど
真言宗寺院で、敷地は広く、四季それぞれに美しく彩られるお寺として知られる。本尊は秘仏の千手観音像。
奈良時代に行基によって開かれたと伝える。かつては安養院といったが、1140年に焼け、1145年に近衛天皇の勅願寺として再興されたという。その時の年号をとり、久安寺と号する。
このお寺は平安時代後期~末期の阿弥陀如来像と平安中期ごろの薬師如来像を伝える。阿弥陀如来像は池田市で唯一の重要文化財の仏像。薬師如来像は市内随一の古仏とされる。
拝観の環境
庫内でよく拝観させていただける。
阿弥陀如来像の印象
阿弥陀如来像は阿弥陀堂の正面につくられた壇上に安置される。像高は約90センチの坐像で、定印を結ぶ。丸々とした顔、薄い体、浅く彫られた流れるような衣から定朝の様式の仏像と思えるが、つくりは一つ前の時期の一木造であるらしい。底部から内ぐりをしているという。材はサクラという。
目鼻立ちは中央に集まる感じで、節目がちな目は穏やかだが、やや釣り気味でもあり、ただ優しいだけでなく強い意志のようなものが込められているかのようである。肉髻は高々とつくられ、上半身は堂々と、脚部は左右に大きく張って安定感がある。
写真で見ると、手足が細めに見えて、力強さに欠けているようにも感じるが、実際に拝観すると円満で美しい像であることがわかる。
薬師如来像について
阿弥陀如来像に向かって右側の壁面に薬師如来像が安置されている。像高約75センチの立像。カヤと思われる材の一木造で、内ぐりもない。檀像として造られたものかもしれない。顔をはじめ傷みも進んでおり、手、下肢、耳たぶ、腕から下がる衣の前面部分など後補のところも多いが、とても魅力的な像である。
面長で、若干うつむき加減とした顔立ちはキリリと引き締まっている。肩はゆったりととり、胸を大きく見せる。腹はあまり大きくはしないが、左腕の衣、腿の上から股間に下がる衣のひだは小像ながら雄大な風がある。特に股間をUの字が繰り返し刻まれている線は印象的である。
ほぼ直立するが、正中線が微妙に曲線を描いているように思え、動きを感じる。
平安時代前期から中期ごろの作とされる。
その他
このほか阿弥陀堂には行基像(笑っているように見える)、三宝荒神像、久安寺再興を果たしたとされる賢実上人像などが安置されている。
また本堂の壇上には四天王像が安置されているが、その中の増長天像は古仏であるらしい。
さらに知りたい時は…
『新修池田市史』1、池田市史編纂委員会、1997年
「古仏への視点18 大阪・久安寺薬師如来立像」(『日本美術工芸』669)、井上正、1994年6月
→ 仏像探訪記/大阪府
