高山不動尊(常楽院)の軍荼利明王像

冬至の日に開扉

住所
飯能市高山346


訪問日 
2019年12月22日


この仏像の姿は(外部リンク)
飯能市有形文化財(彫刻)



拝観までの道
高山不動尊(常楽院)の本尊、軍荼利明王像は毎年1回、冬至の日に開扉される。その日はお寺が送迎のためのバスも出してくださる。バスは西武線の吾野(あがの)駅から出る。
バスといっても13人乗りのマイクロバスである。決まった時刻表があるわけでなく、8時半ごろより15時くらいまでの間でピストン輸送する。高山不動尊下の駐車場までは20分弱なので、行ったばかりだと40分くらい待つことになる。

筆者は吾野駅に10時半過ぎに着き、20分ほど待って、バスに乗せていただくことができた。細く、カーブが連続した急坂を上っていく。
久野健さんの『仏像の旅』に、この仏像を調査した際の話が載っている。乗ったオート三輪が急坂で動かなくなってしまい、車から降りて押したという。なるほど、お寺への道は険しく、細い道はカーブの連続である。久野さんの乗ったオート三輪がエンコしたのはどのあたりだったんだろうかなどと車窓からながめているうちに、お寺の下の駐車場に着いた。
下車後は数分でお寺に着くが、急な坂を登る道である。

11時20分くらいに着くと、本堂では11時からの法要が終盤にさしかかっていた。まもなく法要は終わり、その流れでお坊さん方が本堂裏(本堂の真後ろから石段を上がってゆく)の収蔵庫へとお進みになり、読経。その後に参拝者の収蔵庫での拝観となる。
なお、拝観できるのは1~2時間くらいの間で、参拝者が途絶えたところで閉めてしまうようだ。従って、法要終了の前後の時間に着くように行くとよいと思う。

問い合わせ先は飯能市教育委員会の生涯学習課。法要の時間やバスのことなど、親切に教えていただいた。


拝観料
志納


お寺や仏像のいわれなど
真言宗寺院。かつては長覚寺と称したという。

関東の三大不動の1つと数えられることもあるとのことで、本堂内には不動明王立像や五大明王像が安置され、本尊の軍荼利明王像もかつては不動明王として信仰されていたらしい。


拝観の環境
庫内は明るく、間近でよく拝観できる。側面、背面とも見ることができる。


仏像の印象
軍荼利明王像は像高およそ230センチもある大きな立像である。ヒノキ(あるいはアスナロ)の一木造。内ぐりもなく、足のほぞまで、また脇手のかなりの部分までも一材から彫り出している。平安時代後期頃の作と思われる。
顔は小さく、下半身が長い。一木造の制約のためか、棒を飲んだように体つきはかた苦しい。また、幅に対して厚みは少ない。冠や逆立てた髪や上半身の肉体の表現、下肢にまとった衣の様子も素朴である。
顔つきはきわめて恐ろしげで、見開いたドングリまなこ、大きな鼻、力強い眉、前に突き出した頑丈な顎は大変に印象的である。口は上の歯を見せ、下唇をきつく噛んでいるようである。
衣は素朴と書いたが、膝の上でめくれ上がっており、そこだけは強くひだが刻まれる。その下に膝のお皿が丸く表され、それが左右で高さが異なっており、動きが表出されている。その下の下肢にもなかなかの力を感じる。

顔立ち、体つきは、山岳信仰の像にふさわしい威厳と迫力が感じられる。


その他1
本堂の中、向かって右正面の厨子中に、薬師如来像が安置されている。暗いが、よく見ているとだんだん表情がわかってくる。体はやや反り、顔はうつむき加減にして、優しい表情に荒々しい衣の表現が魅力的な古像である。


その他2
飯能市立博物館に軍荼利明王像の精巧なレプリカが展示されている。

飯能市立博物館


さらに知りたい時は…
『飯能の名宝』(展覧会図録)、飯能市立博物館、2019年
『埼玉の仏像巡礼』、青木忠雄、幹書房、2011年
『さいたまの名宝 国宝・重要文化財』、埼玉県立博物館、平凡社、1991年
『埼玉県古代仏教遺品調査報告書』、埼玉県県民部県史編さん室、1984年
『仏像の旅 辺境の古仏』、久野健、芸艸堂、1975年


仏像探訪記/埼玉県