法興寺の金剛力士像

  鎌倉期仁王像の優作

住所

いすみ市岬町岩熊820

 

 

訪問日 

2010年3月29日

 

 

 

拝観までの道

いすみ市はいわゆる「平成の大合併」によって旧夷隅町、岬町、大原町が合併して誕生した市である。

法興寺(ほっこうじ)への最寄りバス停は、市が運行するバス、市内循環線の「県道桑田交差点」。このバスは市内の主たる駅である外房線の太東、大原、いすみ鉄道の国吉などを経由しながら広い市域を1時間以上かけて循環、内回り・外回りとも1日6便ずつ運行されている。

 

シャトルバス・いすみ市路線バスの時刻表

 

バス下車後北の方角へと進み、 県道274号(一宮・松丸線)を越えるとまもなく右手に「童謡の里」の碑がある。作曲家・海沼実ゆかりの地でとのこと。そこから東側に入る細い道をのぼって行くと、やがて法興寺の仁王門が見えてくる。 バス停から徒歩約30分。

 

喜多院法興寺ホームページ

 

 

拝観料

拝観自由

 

 

お寺や仏像のいわれ

境内の西方の水田より古代の伽藍跡(旧法興寺浄土型伽藍址)が発見されていて、岩熊廃寺とも呼ばれている。ここからは奈良時代の瓦や法華経を刻んだ平安時代の瓦経も出土し、千葉県でも有数の古代寺院跡として知られる。

かつて法興寺では、この寺院跡がある水田のところで晋山式(しんざんしき、新たな住職が就任する際に行われる儀式)を行っていたそうで、このことから法興寺は古代寺院の法灯を受け継ぐお寺であると考えられる。

残念ながら16世紀後半の火災によって法興寺には古記録が伝わらず、岩熊廃寺から現法興寺への具体的な変遷は分かっていない。

 

仁王門に安置されている 仁王像( 金剛力士像)は鎌倉時代の作で、近年修復されて面目を一新した。

 

 

拝観の環境

門の前面にはガラスがはめられているが、これは風から像を守るためのもの。門の内側にはガラスや網などなく、よく拝観出来る。

 

 

仏像の印象

仁王像は像高約270センチ。

大きな像だが動きに破綻なく、とてもよく整った姿である。怒りの表情や筋肉の盛り上がりなど迫力があるが誇張に走らず、安定感がある。細部まで神経が行き届き、背中のもりあがった肉付きの様子などすばらしい。

 

像内には墨書銘や納入された木札銘が多く残されている。このうち両像の頭部内の銘文は造像当時のものと思われるが、「平氏女」など一部を除き、判読不明となっているのは残念である。修理銘からは戦国、江戸、近代と各時代に修理されてきたことがわかる。このうち阿形像納入の1835年の修理木札に1255年(鎌倉中期)の年と、「平氏女建立之」の文字が見える。何ぶん江戸後期に記載されたもので信憑性は決して高くはないが、何らかの根拠があって書かれた可能性もある。

 

スギの寄木造。吽形像に比べて阿形像は複雑な木寄せをしているそうだが、作風から2躰はもともと1対のものとして造られたと考えられている。

 

 

さらに知りたい時は…

『南総天台の仏像・仏画Ⅲ(法興寺・弘行寺)』、天台宗南総教区研修所、2019年

『千葉県の指定文化財』14、千葉県教育委員会、2005年

『岬町史』、岬町史編さん委員会、1983年

 

 

仏像探訪記/千葉県