永興寺の釈迦如来像

毎年4月8日に開扉

住所
茂原市三ケ谷1361


訪問日 
2025年4月8日


この仏像の姿は(外部リンク)
千葉県教育委員会・木造釈迦如来立像



拝観までの道
永興寺(えいこうじ)へは、JR外房線茂原駅南口より茂原市の市民バス(モバス)南部(鶴枝)コースに乗車し「三ケ谷中央」下車、徒歩5分。ただし、平日のみの運行で、本数は少ない。または、小湊バスにて「七井土」下車、西へ約20分。
本尊の釈迦如来像は秘仏で、毎年4月8日の花まつりで開扉される。
事前に電話で問い合わせたところ、9時からお昼頃まで開扉、11時から法要というお話だった。筆者は9時過ぎにうかがい、拝観させていただいた。


拝観料
志納


お寺や仏像のいわれなど
天台宗寺院。
本尊は鎌倉時代後期につくられた清涼寺式釈迦如来像で、像内に納入品がある。その中に記された人名に、西大寺の叡尊像(興正菩薩像)や、叡尊の影響下で製作された唐招提寺の釈迦如来像の納入品中に共通する人名があることから、叡尊によって創始され関東をはじめ全国に急速に広まった真言律宗(西大寺流律宗)との関わりがあったお寺だと考えられる。
称名寺(横浜市、真言律宗の寺院)に伝わる聖教類の中に「三谷永興寺」の寺名がみられるものがあり、これを裏付ける。


拝観の環境
本堂内は明るく、よく拝観することができた。厨子中のため、側面や足元などは見えない。


仏像の印象
釈迦如来像は像高170センチの立像。カヤの寄木造、玉眼。肉眼ではほとんどわからないが、衣に切り金がわずかに残っているそうだ。
納入文書に鎌倉時代後期の1273年の年が記されたものが複数あり、この頃作られた像と考えられる。

一見して、清涼寺釈迦像の模刻像とわかる特徴を備える。螺髪でなく、縄目のような模様の頭髪はたっぷりとして大きい。顔はやや細面で、目力があり、若々しく、凛々しく、さらにはおごそかな雰囲気がある。
上半身は大きくつくられ、胸や腹の肉付きがよく、頼もしい。下半身はすらりとして、細かく陰刻線を刻む。

2017年から2018年にかけて修理が行われ、足先や台座を補い、傷んでいた瞼などが直された。しかし、全体的には当初材がよく残る(ただし右手などは後補)。


納入文書について
像内文書は経典、結縁交名、釈迦の名号を書き連ねたものなど、多数にのぼる。元は巻物の形で、像内に吊られていたらしい。バラバラな状態で発見され、読めない部分も多い。しかし1273年の年や、永興寺の名も見られ、この像がもとからこの寺に安置されていたことがわかる。残念ながら仏師名は書かれていない。
奥書や結縁名には100人以上の名前があり、そのほとんどは他の史料からは知られない人々であるが、前述の通り西大寺の叡尊像や唐招提寺の清涼寺式釈迦如来像の納入品にも見られる人名と重複するものがある。また、女性とおぼしき名前が多いのも特徴である。


さらに知りたい時は…
『千葉県指定有形文化財木造釈迦如来立像附紙本墨書納入文書一括保存修理報告書』、永興寺、2018年
『日本彫刻史基礎資料集成 鎌倉時代 造像銘記篇』11、中央公論美術出版、2015年

『生身と霊験 宗教的意味を踏まえた仏像の基礎的調査研究 』(東国乃仏像三)、2014年
「千葉永興寺釈迦如来立像と胎内納入文書」(『国華』1304)、猪川和子、2004年
「関東の清涼寺式釈迦如来像」(『日本古彫刻史論』、1975年)、猪川和子


仏像探訪記/千葉県