弘行寺の不動明王像と睦沢町立歴史民俗資料館寄託の仏像
睦沢町に伝わる4体の平安仏
住所
睦沢町下之郷1875(弘行寺)
睦沢町上之郷1654-1(睦沢町立歴史民俗資料館)
訪問日
2026年1月25日
この仏像の姿は(外部リンク)
弘行寺 本尊・寺宝紹介
千葉県教育委員会・木造不動明王坐像
千葉県教育委員会・木造如来形坐像
弘行寺の拝観
睦沢町は人口約6000人。千葉県東南部にあり、海に面せず、鉄道も通っていない。温暖で平地が多く、農業の盛んな町であるらしい。
この町でよく知られる仏像は妙楽寺の丈六の大日如来像だが、ほかにも平安時代に遡る仏像がある。弘行寺(ぐぎょうじ)の不動明王像もそのうちの1体である。
弘行寺へは茂原駅南口から道の駅むつざわつどいの郷行き小湊バスで「長生不動尊」下車。
*睦沢町・路線バス
筆者は外房線の上総一ノ宮駅西口にある上総一宮観光案内所でレンタサイクルを借りて向かった。電動アシスト付きもあり、事前予約もでき、対応も丁寧。
弘行寺までは駅から西へ約5キロ。筆者の場合は20分ほどで着いた。
本尊の不動明王像は毎年1月の最後の日曜日に行われる「新年初不動大護摩祈願」の行事の際、本堂で間近に拝むことができる。
この日は境内でお護摩が焚かれる(午後14時から)ほか、特設ステージで音曲などの奉納があり、お寺の入り口にある地区センターではお茶のご接待があるが、いずれも本堂の外なので、ご本尊の拝観はその間も可能。
弘行寺とご本尊について
天台宗寺院。別名を長生不動尊という。
寺伝によると創建は10世紀というが、実質的な創建は江戸時代の前期である。
1919年にこの地域を襲った記録的な雷雨によって火災となり、多くのお堂や仏像を失ったが、現本尊の不動明王像は救い出され、今のご住職が2008年にこのお寺に赴任されてまもなく再発見された。
普段は睦沢町立歴史民俗資料館に寄託され、1月の大護摩の日は以外の日は(展示替えによって収蔵庫に入っているのでなければ)2階展示室でお会いすることができる。
不動明王像の印象
不動明王像は、光背を含めた総高で1メートルくらいの立像。
平安時代後期ごろの作だが、傷んでいるところが多く、2009年に修復されて、面目を一新した。頭部、左腕、足先などは新補されたところである。持物や正面に長く下がるヒモや新しい。光背は本体と同時ではないが古く、鎌倉時代ごろのものという。傷んでいたり、あとの時代に補われたところも多いのだが、修理を重ねながら現代まで伝わって多くの人たちの願いを受けとめて来られたことはとても尊いと思う。
右の腕の黒ずみは20世紀前半の火事のためであろうか。肩から腕を少し後ろに引きながら肘をきれいに張る。ほぼ直立だが、腰は僅かに右に引き気味にして左足を少しだけ前に出す。全体にスリムだが、腰には若干のボリュームがあり、裙の紐を力強く結ぶ。
衣の線は浅く刻まれている。両足の間に下がる裙の縦の線は衣の質感をよく出している。
睦沢町立歴史民俗資料館について
睦沢町立歴史民俗資料館は原則月曜日休み。入館は無料。
町のほぼ中央にあり、交通は茂原駅南口から道の駅むつざわつどいの郷行き小湊バスで「睦沢中央公民館」下車。または上総一ノ宮駅前からレンタサイクルで30分ほど。原則月曜日休館、無料。
2階建てで、1階は民俗資料の展示。
2階は歴史、美術の展示で、一番奥にある仏像の展示は若干の入れ替えはあるがほぼ常設とのこと。古代、中世、近世の仏像が10点ほど並び、壮観である。平安時代の県指定文化財となっている3体の仏像のほか、中世、近世の仏像もなかなか魅力的である。その手前のスペースでは古文書を展示や、郷土ゆかりの作家の絵画展など期間を区切ってさまざまなテーマで展示が行われる。
*睦沢町立歴史民俗資料館
寄託仏像(平安時代の仏像)について
睦沢町立歴史民俗資料館に寄託され、常設展示されている平安時代の仏像は、弘行寺の不動明王像のほか、長昌寺不動堂の不動明王坐像、普門寺の如来形坐像、妙楽寺の毘沙門天像である。ガラス越しながら、間近で大変よく見ることができる。
中で最も古様を示すのが長昌寺不動明王像である。像高約85センチ。一木造で、樹種はヒノキという。目鼻口が中央に寄り、体は肥満して、総髪にした髪は頭頂で大きく結ぶ。
普門寺の如来形坐像は、体は一般的な如来像と同じシンプルな姿だが、宝冠をかぶる。宝冠のために肉髻はわからないが、こめかみのところを見ると螺髪である。何という尊像であるのか、にわかには決め難い。ゆったりと座るが、顔つきは左右対称が崩れていることもあり、厳しさが感じられる。像高約1メートルで、ケヤキの一木造という。
妙楽寺の毘沙門天像は像高約175センチ。一木造。左手で宝塔を掲げ、腰を左側にひねる。まげは低く、目はいからせ、口は閉じる。鎧とその下の衣はなかなかにぎやかな意匠で、魅力的である。
さらに知りたい時は…
『時をこえる仏像 修復師の仕事』、飯泉太子宗、ちくまプリマー新書、2011年
『総南の至宝 未来への遺産展』(展覧会図録)、睦沢町立歴史民俗資料館、2002年
『千葉県指定有形文化財木造不動明王坐像保存修理報告書』、睦沢町教育委員会、長昌寺、2002年
『睦沢の文化財 ガイドブック』、睦沢町教育委員会、1998年
『東上総仏像彫刻の美』(展覧会図録)、睦沢町立歴史民俗資料館、1997年
『睦沢村史』、睦沢村村史編さん会議、1977年
→ 仏像探訪記/千葉県
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