常灯寺の薬師如来像

  1月8日午前のみ開帳

 

住所

銚子市常世田町53−1

 

 

訪問日 

2007年1月8日、 2024年1月8日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

銚子市の生涯学習ガイド

 

 

 

拝観までの道

常灯寺は常世田(とこよだ)薬師と通称され、銚子駅と総武本線の旭駅を結ぶ千葉交通バスで「常世田薬師前」下車、徒歩数分のところにある無住の寺である。

バスの本数は1時間に1本以下で、かなり不便。 

 

千葉交通バス

 

東京方面からは、バスターミナル東京八重洲(東京ミッドタウン八重洲地下2階バス乗り場)から銚子方面行き高速バス(大栄・旭ルート)で「高速八木」下車、東へ徒歩約25分。

 

本像は毎年1月8日の午前中(7時〜12時)に開扉される。

問い合わせ先は、銚子市観光協会または銚子市社会教育課文化財・ジオパーク室。

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺や仏像のいわれ

常灯寺は、寺伝によると奈良時代、行基によって開かれた古寺という。真言宗寺院。

本堂は内外陣を格子で区切った密教本堂の形式で、江戸時代前期のもの。2010年から2016年にかけて修復された。内陣には宮殿がつくられており、かつてはここに薬師如来像が秘仏としてまつられていたが、現在は本堂の手前右側にある収蔵庫に移されている。

薬師如来像は像内銘より、鎌倉前期の1243年に仏師豪慶によって修理されたことが分かっているが、造像の年代や事情など不明。様式から平安時代末期と考えられる。

付近には風力発電の風車が多く立つ。年間を通して風が強い地域なのであろう。そうした環境の中で、よくこれほどの保存状態を保って仏像が伝えられてきたものと思う。

 

 

拝観の環境

収蔵庫の扉口からの拝観。外からの光があるので、ある程度よく拝観できる。

 

 

仏像の印象

ヒノキの寄木造で、像高は約140センチの半丈六像である。

仏の背の高さは1丈6尺であったとされ、仏像もこのサイズが望ましいと考えられた。しかし、1丈6尺は5メートルもの大きさであり(坐像であればその半分くらいの大きさ。平等院鳳凰堂の本尊などはこの基準によって造られている)、そこまでの造像が難しい場合は、それよりやや小さめの周丈六像や半分の大きさである半丈六像が造られた。しかし、いかに「半分」とはいえ、等身の倍ほどの大きさであり、堂々たる像である。

 

顔は丸く、螺髪(らほつ、巻いた髪の毛のこと)は小ぶりであり、額のはえぎわが真直ぐな線で表現されているところ、衣紋の襞(ひだ)は浅く、流麗に表現されていることなど、平等院鳳凰堂本尊を造像した定朝の様式をよく受け継いでいるといえる。

保存状態は非常によく、金箔がよく残り、台座・光背まで当初のものであるのは貴重である。台座は蓮台でなく、裳懸座であるのが珍しい。

ただし、台座の一部や光背の周辺部は鎌倉期の修理の際のものである可能性がある。 

 

 

その他

千葉県立中央博物館(千葉市内)で本像のレプリカが常設展示されている。

 

 

さらに知りたい時は…

『千葉県指定有形文化財常灯寺本堂保存修理工事報告書』、常世田薬師奉賛会、2017年

「千葉県銚子市・常燈寺薬師如来坐像の像内銘に関する考察」(『中世東国の社会と文化』 、佐藤博信編、岩田書院、2016年)、植野英夫

『仏像半島』(展覧会図録)、千葉市美術館、2013年

『日曜関東古寺めぐり』、久野健ほか、新潮社とんぼの本、1993年

『常世伝説の謎』、常世田令子、三一書房、1987年

『解説版 新指定重要文化財3、彫刻』、毎日新聞社、1981年

「下総常世田薬師像に就いて」(『史迹と美術』240)、篠崎四郎、1954年3月

 

 

仏像探訪記/千葉県