勝覚寺の四天王像

「してんさま」

勝覚寺釈迦堂
勝覚寺釈迦堂

 住所

山武市松ヶ谷イ2058

 

 

訪問日 

2012年5月26日、 2019年3月30日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

勝覚寺ホームページ・境内案内    

 

 

 

拝観までの道 

勝覚寺(しょうかくじ)は山武(さんむ)市の東部、九十九里浜に近い平坦な場所にある。

交通は、 成東駅からちばフラワーバス海岸線(蓮沼循環)で「松ヶ谷」下車。交差点に看板が出ているのでそれに従って行くとすぐ。ただし、バスの本数は多くない。

他の交通手段としては、成東駅に常駐しているタクシー。または、成東駅前にある観光案内所のレンタサイクル。

 

拝観には事前連絡が必要。

 

* ちばフラワーバス

山武市成東観光苺組合観光案内所(観光交流センター)

 

 

拝観料

400円

 

 

お寺や仏像のいわれ

真言宗の寺院。草創は古代で、室町時代後期に再興されたという。

1702年に荻生徂徠(青年期をここで過ごした)が記録するところによれば、釈迦堂の上棟は1326年(鎌倉末期)で、ほかに1490年、1591年の棟札が遺されていたこと、本尊の釈迦如来像は盗難のために台座だけになっていたことが知られる。

 

現在の釈迦堂は江戸時代中期の再建。釈迦堂に安置される四天王像は、像高2メートルを越える迫力ある鎌倉仏で、それにちなみこのお寺は「してんさま」として呼ばれ親しまれてきた。

 

 

拝観の環境

釈迦三尊像と四天王像は釈迦堂内に安置される。堂内で拝観させていただける。

 

 

仏像の印象

釈迦三尊像の脇侍である阿難、迦葉像と四天王像は鎌倉時代後期ごろの作であるが、中尊の釈迦像は後世の作にかわっている。左手で蓮華をとる姿は珍しいが、これは江戸時代の版本にある姿をもとに最近修復されたものだそうだ。

 

四天王像は等身大を越える大作である。寄木造、玉眼。樹種はマツという。

怒りを誇張した面部からは、恐ろしくもある。体は太づくりで、邪鬼を踏む姿は若干鈍重な感もあるが、姿勢に破綻はなく、安定感がある。

姿は、鎌倉復興時の東大寺大仏殿四天王像の姿を受け継ぐ。しかし全体的には、地方作ならではの豪放な迫力がみなぎり、魅力的である。

保存状態は全般的に悪くないが、歴史の荒波をくぐってきた証左であろう、補修部分も少なくはない。ことに多聞天像の面部は後補。

なお、寺伝によれば、運慶が国の安定を願って彫り出し、龍神に捧げるために海に流したところ、九十九里の海岸に流れ着いた像であるという。

 

釈迦三尊像の脇侍の2像は像高約65センチの立像で、ヒノキの割矧(わりは)ぎ造、玉眼。

比較的小さい像であるので、見えやすいように外陣近くに安置してくださっていた。若々しい阿難と老相の迦葉の対比が際立つ、鎌倉時代の彫刻らしい生気ある像である。

 

その他(山武市歴史民俗資料館寄託仏像)

山武市歴史民俗資料館は総武線、東金線の成東(なるとう)駅から東南へ徒歩約15分。

または、成東駅よりちばフラワーバス海岸線(蓮沼循環、勝覚寺のある「松ヶ谷」の方面を循環する路線)で「伊藤左千夫生家前」下車、すぐ。

バス停名にあるように、アララギ派の歌人、伊藤左千夫生家に隣接して建てられている。寄託されている仏像があるが、常設展示されてはいない。

 

開館は1972年。それほど大きな規模ではないが、ピロティを設け、1階の中央部分に階段をつけ、2階はそのまわりをぐるりと展示室としている。国立西洋美術館本館や神奈川県立近代美術館鎌倉本館を彷彿とさせると言うと大げさだが、なかなかおもむきのある建物である。

1階は企画展示スペースで、2階の大部分は伊藤左千夫関係資料を展示し、一部を郷土資料コーナーとしている。

 

* 山武市歴史民俗資料館

* 山武市・文化財・歴史・銅造阿弥陀如来及び両脇侍立像

 

かつて山武市では、5月下旬の土日に「山武市内社寺特別公開」という10か寺以上が参加をするかなり大規模な催しが行われており(2014年まで行われたようだ)、その一環として本資料館でも寄託仏像の公開が行われていた。筆者はこの公開行事に際に訪れ、仏像の展示を見ることができた。

 

寄託されている仏像彫刻中、すぐれた出来映えをみせているのが旧真行寺の阿弥陀三尊像である。

成東駅の北に、真行寺という地名が残っているが、ここにはかつて同名のお寺があった。

県内でも最古の寺院のひとつといい、「武射寺(むさでら)」と郡名(武射はかつての郡の名)で呼ばれるほどの地域の中心寺院であったが廃絶し、のちにその後身の寺院として真行寺がつくられたものと思われる。しかし、その寺も近代に廃寺となり、お堂や仁王像など、他寺院に移されて今に伝わるものもあるらしい。

もと真行寺に伝わった阿弥陀三尊像は、町内の日吉神社をへて地区の所蔵となり、現在はこの資料館に寄託されている。

 

像高は中尊が約50センチ、脇侍が約30センチ。いずれも銅造の立像で、大きさ、印相などから、中世に多く造像された善光寺式の阿弥陀三尊像のひとつであるとわかる。

肌がなめらかで、美しく、衣の流れがくっきりとして小気味よい。このタイプの像としては、とても優品といえる。肉髻が大きくつくられているのが、目をひく。

脇侍像は、肌がなめらかで、別鋳の天衣をつけているのが面白い(観音像では亡失)。

  

 

さらに知りたい時は…

「古都さんぽ 勝覚寺」(『朝日新聞 be(週末別冊版)』、2018年3月31日、田中ひろみ

『仏像半島』(展覧会図録)、千葉市美術館、2013年

『山武市の仏像』、山武仏教文化研究会、2011年

『ふさの国の文化財総覧』3、千葉県教育庁教育振興部文化財課、2004年

『房総の神と仏』(展覧会図録)、千葉市美術館、1999年

『千葉県文化財調査報告書 昭和51〜55年度』、千葉県教育委員会、1982年

 

 

仏像探訪記/千葉県

山武市歴史民俗資料館
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