龍門寺の千手観音像

ばんけいさんのお寺に伝わる古仏

住所
姫路市網干区浜田812


訪問日 
2025年7月21日


この仏像の姿は(外部リンク)
姫路市 文化財・歴史



拝観までの道
龍門寺(りょうもんじ)へは山陽電鉄網干線の終点、山陽網干駅から徒歩約25分。
駅の南側で国道250号に入り西へ。まもなく揖保川(いぼがわj)にかかる網干大橋を渡る。さらに進むと、中川にかかる橋が見えてくるが、それは渡らず、南へと折れたところにある。なお、お寺の門は南側である。
拝観は事前申し込み必要。


拝観料
500円


お寺や仏像のいわれなど
江戸時代前期に盤珪永琢(ばんけいようたく)によって開かれた臨済宗寺院。多くの寺院を開いたことでも知られる盤珪だが、亡くなったのはこの龍門寺である。
いくつものお堂が軒を連ね、大方丈の前にはみごとな枯山水のお庭が広がる。この立派な寺院が、領主の力に頼るのではなく、盤珪を慕う一般の人々が力を合わせてつくられたと知ると、実に感慨深い。
盤珪はこの地域の出身で、貴賤の別なく教えを伝え、多くの弟子を育てた。「生身の釈迦」、「東の白隠、西の盤珪」などとも言われた高僧だが、地域の方は今も「ばんけいさん」と親しみを込めて呼んでいるそうだ。

この寺には創建よりも古い時代の仏像が何体も伝えられている。それぞれ事情があって近隣の寺院などから伝えられたものと思われる。


拝観の環境
千手観音像は、寺宝館(宝物館)に安置されている。ガラス越しだが、近くよりよく拝観できる。


仏像の印象
像高は1メートル余りの立像。一木造で、材はヒノキという。脚部に内ぐりがあるらしい。平安時代中期ごろの作と思われる・
細身で姿勢よい立ち姿である。下半身を長くして、プロポーションがよい。
口もとに微笑みを浮かべ、穏やかな印象がある一方、目の位置が左右で微妙に違い、それによって表情に動きがもたらされているようにも感じられる。上半身は四角くばり、胸や腹はそれほど強調されない。
下肢の衣はひだが整然と太い線で弧を連ね、その間に渦文がつくられている。
平安時代前期風の古様さとその後の時代に見られる穏やかな要素がほどよく同居した、すぐれた仏像と思う。


その他
このほか、禅堂に安置されている釈迦如来坐像と観音堂本尊の聖観音立像も平安時代の仏像である。
大方丈の本尊の十一面観音坐像は盤珪自らの作と伝える。
地蔵堂の本尊の地蔵菩薩坐像は、盤珪が母、妙節尼の死を悼み、遺品の中から自らが母に送った文を焼いてその灰を塗りこんでつくられていると伝え、「お手紙地蔵尊」といわれている。お願いすると拝観させていただける。


さらに知りたい時は…
「ほっとけない仏たち74 龍門寺の千手観音」(『目の眼』545)、青木淳、2022年2月
『盤珪 虚空を家と棲みなして』、寺林峻、神戸新聞総合出版センター、1999年
『姫路市史』15巻中(別編文化財1)、姫路市史編集委員会、1995年
『ふるさとのみほとけ 播磨の仏像』(展覧会図録)、兵庫県立歴史博物館、1991年


仏像探訪記/兵庫県