転法輪寺の阿弥陀如来像
7月海の日などに開扉

住所
神戸市垂水区名谷町2089
訪問日
2025年7月21日
拝観までの道
転法輪寺(轉法輪寺、てんぽうりんじ)へは、垂水駅東口のバス乗り場(「垂水東口」)または地下鉄名谷駅前から山陽バス12系統で「中山」で下車し、北へ徒歩10分ほど(他の11、14系統のバスでも「中山」バス停を通るが、立体交差の上の道路上になるので注意)。
バス停付近は大きな道路が複雑に交差しているが、中山の交差点から北側の道へと進み、さらに左前方に現れる遊歩道に入ると景色が一変する。そこは小さいながらも自然が残る貴重な森で(県指定文化財「転法輪寺の原生林」)、その中の小径をたどり石段を登ると転法輪寺境内に出る。右手に庫裡、庫裡の裏手にあたる場所に収蔵庫、その北側に蓮池に囲まれた弁天堂、さらに先の一段高くなったところに本堂、護摩堂、大師堂が並ぶ。
本尊の阿弥陀如来像は収蔵庫に移されており、普段は非公開。12月31日の除夜会、1月1日の修正会、1月7日の追儺式、4月第1日曜日の龍華祭(花祭り)、7月海の日の蓮祭りの時には扉が開かれて拝観できるようだ。
海の日の開扉について事前に電話で問い合わせたところ、蓮祭りは10時からで、その時間に合わせて収蔵庫も開扉されるが、お昼ごろには閉じるということだった。
筆者はその日の11時ごろに着いたところ、蓮祭りは一段落していたが、収蔵庫の拝観をすることができた。
他の行事日の開扉は時間が異なるかもしれないので、事前に問い合わせてお訪ねになるとよいと思う。
拝観料
特に拝観料等の設定はなかった。
お寺や仏像のいわれなど
真言宗寺院。平安時代初期開創と伝える古寺で、かつては東垂水の高台にあったというから、ここよりは南方だったかと思われるが、いつの頃か現在地に移り、江戸時代には多くの堂塔が聳えて隆盛であったという。
本尊の阿弥陀如来像は平安時代の作。それ以外にも古仏(転法輪寺木彫群)が伝えられている(十一面観音像、地蔵菩薩像、天部像、神将像の立像4体)。これらは収蔵庫内の左右に安置されている。
拝観の環境
収蔵庫の扉口からの拝観。照明等はないが、像までの距離はそれほど遠くなく、また大きな像でもあり、外からの光でまずまずよく見ることができる。
仏像の印象
像高140センチ余りの坐像。堂々たる半丈六像である。ヒノキの寄木造という。来迎印を結ぶ。
丸々とした顔で、目鼻立ちは中央に寄り、穏やかというよりは厳しい表情である。小鼻が小さく、顎がしっかりとつくられているのが印象深い。
肉髻は大きく盛り上がる。螺髪の粒は小さく、よく整う。
上半身は大きく、肩は首に向かって盛り上がっていくようにも見えて、いかにも逞しく感じられる。脚部も高く、衣のひだも太い。足は右を上に組み、正面に舌状に出てきている衣の部分にもひだがにぎやかに刻まれている。
板光背を背負っているが、本来一具ではなく、後補であるらしい。しかし鎌倉時代ごろまでさかのぼれる古いもので、地味であるが像とよくあっているように感じる。
その他
本堂は内外陣を格子で仕切る密教本堂の形式。本尊が収蔵庫に移っているために、本堂の中央にはそのお身代わりかと思われる新しい像が安置されている。その周りに安置されている四天王像は平安時代後期の一木造の像である。
さらに知りたい時は…
『新修神戸市史 歴史編2』、新修神戸市編集委員会、2010年
『TV見仏記』12(DVD作品)、京都チャンネル、カルチュア・パブリッシャーズ、2009年
『神戸の文化財』、神戸市教育委員会ほか、神戸新聞社、1982年
→ 仏像探訪記/兵庫県
