平等院鳳翔館の十一面観音像

平等院の開創以前の仏像

鳳翔館入口
鳳翔館入口

住所

宇治市宇治蓮華116

 

 

訪問日 

2008年11月17日、 2018年2月4日

 

 

この仏像の姿は(外部リンク)

 平等院ホームページ・彫刻・工芸

 

 

拝観までの道

平等院までは、平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像の項を参照して下さい。

 

鳳凰堂の前の池をぐるりと順路にそって巡って行くと、南側に平等院の美術館である「平等院ミュージアム鳳翔館」がある。

入口からは建物は見えず、長いエントランスはそのまま地下の展示室へ通じる。景観を壊さない工夫なのであろう。

その先に格子越しに国宝の梵鐘が見え、にくい演出である。いったん映像展示室を経て、梵鐘の展示室、企画展示室、鳳凰堂の扉絵を紹介する展示室、出土品を展示する小スペースを経て、雲中供養菩薩の展示室へとぐるりと地下1階のフロアを巡る。

 

 

拝観料

600円(平等院庭園入場と共通)

 

 

お寺や像のいわれ

平等院は11世紀なかば、藤原頼通が宇治の別荘を寺院としたものだが、お寺の開創以前の作と考えられる仏像など、伝来不明ながらすぐれた仏像や神像の彫刻がいくつも伝わっている。

また、鳳凰堂の屋根にあった鳳凰一対(現在は屋根にはレプリカが上がっている)や堂内の壁にかけられている雲中供養菩薩像など、鳳凰堂の本尊以外にも見るべき仏像は多い。それらは鳳翔館におさめられている(雲中供養菩薩は一部)。

 

 

拝観の環境

平等院に伝来するが、その開創以前の仏像と思われる像に、十一面観音像、地蔵菩薩像、伝帝釈天像がある。

これらは鳳翔館の順路なかほどにある企画展示室の壁付きのケース内に展示され、ガラスケース越しながらよく鑑賞することができる。

 

 

仏像の印象

平等院の境内に観音堂というお堂がある。

鳳凰堂に比べ地味な感じは否めないが、鎌倉時代の和様の建築として貴重である。また、平等院の本来の本堂はこの観音堂の建つ位置にあったとされる。

十一面観音像はその本尊として長くまつられてきたものである。

 

像高は約170センチ。一木造で背中からくりを入れる。

口もとに微笑みを浮かべ、やさしい表情が魅力的である。額は狭く、顎はしっかりとつくる。目鼻立ちはくっきりとして、目は半眼というよりは、ある程度しっかりと見開く。

額の上の髪のたばはたっぷりとつくられているが、その上の地髪は帽子のようにも見える。本来は天冠台や冠があり、雰囲気がまた違っていたのだろう。

胸は広く大きく、胴は絞る。お腹を前に出し、上部に2本の筋を入れる。

どちらかといえば直立に近いが、若干腰を左にひねっていて、それにともなって裙の折り返しが揺れているさまがあらわされる。下半身の衣は厚く、やや重たげに表現される。

11世紀前半ごろの作と考えられる。

 

十一面観音像に向かって左に展示される地蔵菩薩像についても、ここで紹介させていただく。

地蔵菩薩像は鳳翔館に移される前は観音堂内に安置され、今と同じように十一面観音像に向かって左側に安置されていたそうだ。十一面観音像よりもさらに古様で、10世紀ごろの作。十一面観音像と同様、もともとの安置寺院や造像主などはわからない。

像高約160センチの立像。ケヤキの一木造で、背中からくりを入れる。

目鼻は中央に集まる。体は細長く引き延ばされたようで、手足は縮こまり、いかにも彫刻の材としては制約の多い霊木を用いて作り上げたといった雰囲気があり、魅力的である。

怒り肩。衣のひだは陰刻線を用いて、独特の雰囲気をだす。下肢には翻波式衣文が見える。

 

 

その他

企画展示室に展示されているこのほかの彫刻としては、部屋の中央に鳳凰堂の屋根からおろされた鳳凰一対が置かれる。金銅造。本尊と同じくして制作が進められたとするならば、定朝作の可能性があるといえるだろう。

 

最後の部屋には鳳凰堂の壁面から移されてきた雲中供養菩薩像が展示され、「雲中の間」と名付けられている。特に独立ケースに展示されたものは、たいへんよく拝観できる。これらの像は定朝の工房作と考えられ、しぐさや姿勢など1躰ずつ異なり、すばらしい出来映えである。鳳凰堂の壁面に懸けられているものを見上げたときには分からなかった表情や像の厚みがよくわかる。

 

このミュージアムは建築としても名高く、作者は栗生明。この作品で日本芸術院賞を受けたという。

出口は上の階で、最後に長い階段を上がると、ミュージアムショップに出る。エレベータはあるが自由には使えず、係の人に言うと案内してくれる。係の方は熱心で、別れ別れになった一団が合流できるようになど一生懸命に動いていて好感が持てたが、多くの団体客が次々と入ってくるミュージアムのつくりとしては、十分とはいえないように感じた。エントランスや展示室をつなぐ通路は狭く、スポット照明をかっこ良く使っているが全体的には場内は暗く、また展示の説明のラベルの文字も大きくない。年輩の方にはあまり優しくないミュージアムだなというのが筆者の正直な感想である。

 

 

さらに知りたい時は…

『新版 古寺巡礼京都13 平等院』、淡交社、2007年

『平等院鳳翔館』(図録)、平等院発行、2002年

『宇治の佛たち』、宇治市歴史資料館、宇治市教育委員会、1989年『平等院大観』2、岩波書店、1987年

 

  

仏像探訪記/京都府