青蓮院の兜跋毘沙門天像

仏師快慶の作か

住所
京都市東山区粟田口三条坊町69-1


訪問日 
2023年8月25日



拝観までの道
青蓮院(しょうれんいん)は知恩院の北、かつて京から東へ抜ける道としての要地であった粟田口にあるお寺である。
最寄り駅は地下鉄の東山駅。下車後徒歩6~7分。

青蓮院ホームページ


拝観料
600円


お寺や仏像のいわれなど
天台宗の門跡寺院。親鸞聖人ゆかりのお寺でもあり、仏画の青不動尊、周遊できる庭園、立派な楠も有名。
格式ある寺院らしく、大玄関、宸殿、小御所などの名前がついている。順路としては、殿舎内をまず拝見し、その後にお庭に下りて鑑賞させていただく。

本堂(熾盛光堂、しじょうこうどう)は小御所の裏手にある。順路に従って本堂に入ると、中央には青不動尊のレプリカがかけられている。これが本堂の東側で、縁を伝って西側に出ると、こちらからはお堂中央の大きな厨子が見える。つまり、このお堂は東西両面からお詣りできるようになっていて、お厨子の裏面に青不動の絵が懸けられているのである。
厨子中に秘められた本尊は熾盛光如来曼荼羅(しじょうこうにょらいまんだら)で、これは梵字一文字が書かれた種子曼荼羅であるとのこと。2005年に、創建以来はじめて開帳されたのだそうだ。


拝観の環境
本尊厨子に向かって左奥に兜跋毘沙門天像が安置されている。
扉口からの拝観のため距離があり、明かりはあるが、正面からあててくださっているわけでないので、細かいところまで見るのは難しい。


仏像の印象
像高100センチあまりの立像で、ヒノキの寄木造、玉眼。鎌倉時代前期の作。
地天のてのひらにのり、二鬼を従え、異国風の鎧をまとう兜跋毘沙門天像である。
兜跋毘沙門天像といえば、東寺宝物館に安置されている像(もと羅城門に置かれていたと伝わる)が有名で、平安時代にはその模刻像がいくつもつくられているが、鎌倉時代に入ってからの像はめずらしい。右手を東寺像よりも高く上げるなど違いもあるが、全体的にはかなり忠実に写し取っている。ただ、全体の雰囲気はかなり異なり、鎌倉時代の風が見える。

左手は肩のあたりで宝塔を掲げ、上げた右手は武器の柄をとる。右肩は少し後ろに下げ、左肩はやや前方に出ているようにも思う。それにともなって腰が左側に出、右足が少しだけ左に出る。体の自然な動きをよくとらえ、しかし誇張に走らず、バランスがとれて、品のある立ち姿が魅力的である。

青蓮院の熾盛光堂の仏像を、1210年、1216年に快慶が手がけている(釈迦如来像と曼荼羅諸尊像)。青蓮院の熾盛光堂や懺法堂には毘沙門天像が安置されていたとする記録も残る。本像はそのどちらかにあたるのではないかと考えられている。青蓮院の造仏を多く手がけた快慶がその作者である可能性がある。


さらに知りたい時は…
「青蓮院伝来の毘沙門天立像に関する一考察」(『日本美術のつくられ方』、羽鳥書店)、佐藤有希子、2020年
『特別展 快慶』(展覧会図録)、奈良国立博物館、2017年
『京都の鎌倉時代彫刻』(『日本の美術』535)、伊東史朗、至文堂
「新指定の文化財」(『月刊文化財』501)、文化庁文化財部、2005年6月


仏像探訪記/京都市