摂取院の地蔵菩薩像
平安時代後期~末期に作られた美しいお地蔵さま

住所
伏見区深草直違橋11‐106
訪問日
2025年5月15日
この仏像の姿は(外部リンク)
京都の文化財(第11集)
拝観までの道
伏見区の摂取院(せっしゅいん)は、JR奈良線の稲荷駅を下車し、右手(南)へ。まもなく奈良線の踏切があるが、その手前、左手にある。京阪線の龍谷大前深草からも行ける。
拝観料
特になし
お寺や仏像のいわれなど
浄土宗のお寺で、開創は江戸時代初期という。創建時は今の稲荷駅のところにあり、近代に鉄道ができることになって移ったそうだ。
このお寺には、平安時代の地蔵菩薩像が伝わっている。寺伝によると、元々は比叡山にあったものが、江戸時代初期にこの近くに移され、その場所がさびれたために現在の伏見街道沿いへと再度移座したのだという。お腹のところに裙の結び目が見えることから「腹帯地蔵」と呼ばれて安産のご利益があるとの信仰が広まり、大名家や将軍家関係のお姫さまのお産に霊験があったとして名声が高まったそうだ。
拝観の環境
摂取院の門に向かって左側に設けられているお堂に安置される。道に面しているので、日中自由に拝観することができる。
仏像の印象
地蔵菩薩像は像高約130センチの坐像。ヒノキの寄木造。平安時代後期~末期の作。
目鼻口は中央に寄り、表情はあくまで穏やかにつくられている。なで肩、上半身は大きいが抑揚は少ない。衣のひだは流れるような美しさを見せる。
胸のあたりで錫杖、宝珠を持つ手はスラリとは伸びない感じで、脚部もあまり左右に張らない。そのために全体としてやや縮こまっているようにも見え、半丈六像としての堂々とした感じは薄まって、親しみやすい雰囲気を出している。
像内に修理銘がある。その中に1485年の年と「大進法眼」「六条東洞院仏所」と書かれたところがある。これに近い時期で「大進法眼定勢」と書かれた銘文を持つ仏像が他にあるそうで、摂取院像もこの定勢という仏師が修理したとわかり、室町時代後期の仏所の情報が書かれているものとしても貴重である。
さらに知りたい時は…
『京都の文化財』11、京都府教育委員会、1993年
→ 仏像探訪記/京都市