慰称寺地蔵堂の地蔵菩薩像

  8月の地蔵盆に開扉

 

住所

京都市右京区梅ケ畑檜社町4(慰称寺)

 

 

訪問日 

2015年8月23日

 

 

 

拝観までの道

京都駅前からJRバス周山方面行き、または四条烏丸より京都市バス8系統に乗車し

「御所ノ口」(「高雄」のひとつ手前)で下車。すぐ西側の小道を上がっていったところに地蔵堂がある。

奥に収蔵庫が設置され、地蔵菩薩像が安置されている。

開扉は1年に一度で、8月23日または23日の直前の日曜日の日中。

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺や仏像のいわれなど

近くの慰称寺(いしょうじ)に属しているが、地域で守り伝えられてきたお堂で、中島地蔵堂あるいは中島の光堂、梅ヶ畑地蔵堂などとも呼ばれる。

本尊の地蔵菩薩像は、広隆寺霊宝殿(宝物館)に安置される「埋木地蔵」とよく似た像として知られる。

 

 

拝観の環境

堂内でよく拝観させていただけた。

 

 

仏像の印象

像高は約1メートルの立像、錫杖を持たない古式の地蔵菩薩像である。

顔は目鼻や眉をぐっと凝縮したようで、ことに目は釣り上がり気味、顎はしっかりとつくって引き締まった顔立ちとなっている。右肩をあらわにし、上半身はぽってりと豊かな肉付きで、下腹も太めである。お腹には2条の陰刻線を強く刻む。

下半身に裙をまとい、上半身から2枚の衣を着ける。左手にはこの2枚がかかっているが、内側よりも外側に下がっている方が短いのは珍しい。一方、右肩はあらわにして、2枚目の布は右の腰から逆三角形の形で下がる。

右足を半歩踏み出し、動きをあらわす。それに衣の複雑な表現が重なって、今にも動き出しそうな躍動感を生んでいる。

 

 

その他(広隆寺埋木地蔵との関係)

本像と非常によく似た像が、同じ京都市右京区の広隆寺に伝来する。

広隆寺の霊宝殿内、有名な弥勒菩薩像が安置されている空間の右手、出口に近い方の壁面の中ほどに立つ地蔵菩薩像で、像高や特色が慰称寺地蔵堂の像と共通する。

本像は「埋木地蔵」と称される。古記録によると、この像は光る菩提樹の中から見いだされ、数々の霊験をあらわした、また平安末期に院派仏師の院尚によって修理された等と伝える。かつて存在した広隆寺の子院十輪院の本尊であったという。

 

この2像は大変似ているので、同じ作者による像ではないかといわれたこともあったが、もっとあとの時代、すなわち広隆寺の埋木地蔵の霊験譚が広まったころにこれを忠実に模してつくられたのが慰称寺地蔵堂の像ではないかとも考えられる。そう思って見ると、慰称寺の像の方がきりりとして鎌倉仏の雰囲気もあるようでもある。

なお、慰称寺像の台座には1260年をあらわす年と3000遍の宝号を千日間に渡って3663人が唱えたことが書かれている。これが造像年をさすと考えられる。

 

 

さらに知りたい時は…

『日本彫刻史基礎資料集成 造像銘記篇 鎌倉時代』16、中央公論美術出版、2020年

『弥勒菩薩の指』、田中重久、山本湖舟写真工芸部、1961年

 

 

仏像探訪記/京都市

慰称寺地蔵堂地蔵菩薩像
慰称寺地蔵堂地蔵菩薩像