長隆寺の薬師如来像と大日如来像
キリリと整った薬師仏と力強い大日像

住所
伊賀市森寺93
訪問日
2025年3月26日
この仏像の姿は(外部リンク)
伊賀市デジタルミュージアム・木造薬師如来坐像(目録)
伊賀市デジタルミュージアム・木造大日如来坐像(目録)
拝観までの道
伊賀鉄道線の依那古(いなこ)駅から西南西に徒歩20分弱。
駅の前を南北に通る国道422号に出て、南に400メートルほど、右折して木津川を渡る。西へ600メートルほど、矢田川(木津川支流)にかかる宮橋という橋を渡ると正面が猪田(いだ)神社である。
長隆寺はこの猪田神社の裏手にあり、左側から回り込むように進む。
拝観は事前申し込み必要。ただし、雨天など多湿時は拝観不可となる。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれなど
真言律宗の寺院。
行基草創と伝え、近くの猪田神社の別当寺であったという。
なお、長隆寺のある森寺の地名は、長隆寺が猪田神社の「守寺」であったからとも、かつては長隆寺の十六坊が並び立ち民家がなかったからともいう。
本尊は胎蔵界の大日如来像で、別に定朝様の薬師如来像が伝来し、こちらは客仏のようであるが、伝来は不詳。薬師如来像は収蔵庫に安置される。
拝観の環境
薬師如来像、大日如来像とも庫内、本堂内でよく拝観させていただけた。
仏像の印象
薬師如来像は像高約90センチの坐像。平安後期の作。材はヒノキといい、割り矧ぎ造。左手で薬壺を持ち、左足を上にして組む。
写真で見るとずんぐりした雰囲気であるが、実際にはきりりとした印象の像である。
肉髻はこんもりと盛り上がり、螺髪の粒は小さくよく整う。目は比較的見開きがある。鼻口が接近し、顎はしっかりとつくる。体と衣の表現が自然で、見ていてうっとりするほど。脚部の左右への張りも大きく、安定感がある。
本堂の大日如来像は像高約140センチの坐像。堂々たる半丈六像である。一木造だそうで、よくこれほどの大木が手に入ったものだと感じる。平安時代後期ごろの作とされる。ただし、像の詳細な調査は行われていないらしい。
いかり肩で、腕、足を包む衣の表現など力強い。顔立ちは生々しい感じがある。雄大な雰囲気の魅力的な像である。
その他
本堂に向かって右手(収蔵庫の手前)に石造物が集められているところがあり、その一番上に阿弥陀如来石仏が置かれている。穏やかでどことなく可愛らしい雰囲気があり、南北朝時代ごろの古仏という。
さらに知りたい時は…
『三重県史. 別編 美術工芸』、三重県、2014年
『上野市史 文化財編』、上野市、2004年
→ 仏像探訪記/三重県
