石山観音公園の磨崖仏

中世、近世につくられた3像

阿弥陀如来像
阿弥陀如来像

住所
津市芸濃町楠原字石山


訪問日 
2025年3月27日


この仏像の姿は(外部リンク)
津市・市外向け情報津うrip・石山観音公園(公園内の地図あり)



拝観までの道
石山観音公園は鉄道の駅や路線バスからは離れており、最寄りは名古屋の名鉄バスセンターと上野市駅前を結ぶ高速バスの「関BS(バスセンター)」である。
「関BS」の停留所は名阪関ドライブインの建物の横手にある。そのドライブインの東側の県道10号(伊勢別街道)を南に100メートルほど行くと、石山観音公園を示す表示が出ているので、そこを右折する。自家用車の行き来があるが、この道の南側にゴルフ場が広がっているためで、西南西に10分ほど行くと分岐でゴルフ場への道と分かれ、そのあとは車の通りは少なくなる。そこから800メートルほどで観音公園の入り口に着く。
「関BS』から観音公園の入り口まで、トータルで徒歩25分くらいである。
なお、観音公園には休憩場、トイレ、杖の貸し出し、駐車場があるが、自販機等はないので、飲み物等は事前に購入しておくとよい。


拝観料
特になし


石山観音公園について
石山観音公園は、巨大な1つの岩の周りにたくさんの石造仏がつくられ、周遊できるようになっている。もとはお寺があったのかもしれないが、今は公園として整備されている。一番高いところは「馬の背」と呼ばれ、標高は160メートルくらい。入り口がすでに100メートルくらいの標高なので、たかだか数十メートルの高さの場所をぐるりと回って降りてくる。道も整備され、案内表示もしっかりとされており、それほど大変なことはない。
しかし、次の3つの点について気をつける必要がある。1つめは道が複雑に分かれ、どっちへ行くか迷うところもあるので、地図は必ず携帯すること(入り口付近に置かれているパンフレットに地図が載っている)。2つめは、アップダウンがあり、また道が細くなっているところもあるため、甘く考えることなくハイキングに適した服装、靴で行くこと。3つめとしては、蜂が活発になる時期は避けるのが賢明である。

ここにある石仏は3つに分類される。1つめは県の文化財として指定されている大きな磨崖仏で、3体ある。以下で紹介するのはこれである。2つめは西国33所のミニチュア版として入り口から順に巡拝できるようになっている33体の石仏。これらはいちどきに作られたものではないようで、大きさもまちまちであり、「馬の背」の大岩の側面に掘られた苔むす石仏もあれば、近年補われたと思われる新しい像もある。そして最後は、それ以外の大小の石仏である。


巡拝にかかる時間
これらを巡拝するには、1周約1時間とされている。筆者もそれくらいの時間で回った。しかし、西国霊場の仏像やその他の石仏をていねいに拝み、また写真を撮ったりしながらゆっくりと回れば、それ以上かかりそうである。
県指定の磨崖仏3体はすべて入り口に近いところにあり、これらを見るだけならそれほど時間はかからない。


3体の磨崖仏について
県の指定文化財となっている磨崖仏は阿弥陀如来像、地蔵菩薩像、聖観音像の3体で、いずれも立像である。阿弥陀如来像が一番古く、鎌倉時代後・末期ごろ、地蔵菩薩像は少し遅れて鎌倉時代末期から南北朝時代ごろとされ、聖観音像はずっとあとの江戸時代末期の作である。

公園の入り口すぐ右手に西国三十三所石仏の第1番があり、正面に目を移すと地蔵菩薩像の磨崖仏がある。そこから右に石段を上がっていくと第2番の石仏があり、順路通りに左に行くとまもなく聖観音像の磨崖仏、2番の石仏から順路とは逆になるが右手の石段を登っていくと、33番石仏の裏手の崖に阿弥陀如来像がある。


磨崖阿弥陀如来立像
像高約350センチ。
岩を壺型に彫りくぼませて、その中に高浮き彫りに作られているので、周りの窪みは光背にも龕にも見える。足下には蓮弁の台座、その下に四角い台座が作られ、いかにも入念の作である。台座まで含めると総高は5メートルを超える。
丸顔、目は切れ長とし、口は小さく、全体に整ったお顔立ちである。来迎印を結ぶ。手はやや窮屈そうにつくられている。衣のひだはほぼ平行に刻まれて、形式化しているようにも思うが、一方で大きな像に長々と彫られた線は心地よい伸びやかさがあるとも感じられる。
胸に小さな四角い穴があるが、これは納入品が納められたあとと思われる。
上部には屋根が付けられていた跡があるという。そのためか、摩滅があまり進んでいず、像容がくっきりとよくわかる。

地蔵菩薩像
地蔵菩薩像

磨崖地蔵菩薩立像と磨崖聖観音菩薩立像
地蔵菩薩像は、観音公園に入ってすぐ目の前にそびえるように立ち、強いインパクトを与える。
像高320センチ余りで、周囲を彫りくぼめ、立体感を出しているのは、阿弥陀如来の磨崖仏にならってつくられたものであろう。阿弥陀如来像に比べて頭部は小さく、顔立ち、首、衣のひだなど省略気味に見える。
近くの3か郷の人々の雨乞いの本尊であったという。

聖観音像は像高約260センチ。頭の横、左右に大きく派手な飾りがついているのが印象的であるが、残念ながら頭部は風化が激しい。下半身の衣はよく残っているのだが、顔つきがわからないのは残念である。
この像は記録から1848年に作られたことがわかっている。その記録には唐招提寺の仏像をモデルとしたこと、制作の期間なども書かれており、また下絵も残されているという。


その他
公園外にも石仏がある。
駐車場の脇から下りていく細道の先に地蔵尊や梵字が彫られたものがある。ただし、「マムシに注意」との表示がある。


さらに知りたい時は…
『三重県史 別編 美術工芸』、三重県、2014年


仏像探訪記/三重県

聖観音像
聖観音像