新光明寺の阿弥陀如来像
ビルの7階にいらっしゃる仏さま
住所
静岡市葵区伝馬町11-3
訪問日
2010年8月8日
この仏像の姿は
拝観までの道
新光明寺は静岡駅から北へ徒歩3分。
留守のこともあるので、事前に電話をしてお寺のご都合を確認してからうかがうのがよい。
拝観料
志納
お寺のいわれ
駅前にあるお寺である。
松坂屋や丸井もある繁華街の中になぜお寺がとも思うが、かつては寺町だったようで、新光明寺は元々この場所にあったとのこと。ただし何度も火災にあって記録が失われ、戦国時代には今川氏の保護でかなり栄えていたことなどを除いては分かっていることは少ないのだそうだ。
戦後になってお寺は郊外に移転したが、本来お寺があったこの地に別院を残すこととし、「迦葉(かしょう)館」というビルの7階に阿弥陀如来像をまつっている。
拝観の環境
堂内は明るく、すぐそばで、また側面からも拝観させていただける。
仏像の印象
顔つきは四角く、力がみなぎっているような若々しい作風の像で、快慶の前半生の像を彷彿とさせる。肉髻は低く、自然に盛り上がる。額は広い。
一方、衣はやや複雑な要素が加わる。左胸のところで衣が反転し、また右胸の下でU字形にたるませるところは、快慶晩年の作に見られる装飾性の加味のようである。
こうしたことを総合的に考えて、快慶本人の作というよりは、快慶の彫刻をたいへんよく学んだ一門の仏師の作ではないかと推定されている。
来迎印だが、左右とも親指と中指で丸をつくっているのは珍しい。後世にいうところの中品下生印ということになろうか。
表面の金箔は近世のもの、また光背や台座も後補である。
その他
保存状態がよく、解体修理は行われていないものの、X線による調査はされていて、像内には五輪塔形の納入品があることが知られる。
また、頭の内側にばね状あるいは蛇腹状の物を用いて玉眼を固定していることがX線を用いた調査によってわかっている。
* なお、奈良市・西大寺愛染堂安置の叡尊(興正菩薩)像(1280年)の頭部内にも螺旋状の納入品がある。銅製の円筒に銀線をコイルのように巻いたもの。しかしこれは玉眼のおさえではなく、その上部の白毫裏側にとめられているもので、固定用の器具でなく宗教的な理由のある納入品のようである。
さらに知りたい時は…
「ほっとけない仏たち78 新光明寺の阿弥陀如来」(『目の眼』549)、青木淳、2022年6月
『快慶』(展覧会図録)、奈良国立博物館ほか、2017年
「静岡・新光明寺の木造阿弥陀如来立像」(『仏教芸術』183)、根立研介、1989年3月
『月刊文化財』261、1985年6月
『日本のばねの歴史』、日本ばね工業会、1984年
『科学的方法による仏教美術の基礎調査研究』、奈良国立博物館、1982年