護国寺本堂の出山釈迦像
苦行の場を去るお釈迦さまの姿
住所
文京区大塚5-40-1
訪問日
2012年7月15日、 2013年4月13日
拝観までの道
東京メトロ有楽町線護国寺駅下車、すぐ。
本堂(観音堂)は、お昼の時間を除いて日中自由に入堂、拝観できる。
拝観料
拝観自由
お寺や仏像のいわれなど
真言宗の寺院。徳川綱吉の時代に創建され、本堂はこのときのもの。
本堂本尊は秘仏の如意輪観音像で、毎月18日に開帳されている。その左右にずらりと並んだ三十三応現神像も創建当初の像が揃い、貴重である。
また、堂内に掛けられた絵馬も見どころ。
本堂内、本尊に向って左側の間には、地蔵菩薩立像、大日如来坐像、不動明王立像など、古仏が安置されている。それぞれ事情があってこのお寺が預かることになった諸像と思うが、もはや来歴は不明である。
拝観の環境
この仏間はやや暗い。晴天の午後の時間は、障子を通して光が入るので見やすくなる。
仏像の印象
仏間の中で異彩を放っているのが、出山(しゅっせん)釈迦像である。
お釈迦さまは6年の間苦行を行い、しかし悟ることはできず、スジャータの奉った乳粥によって体力を回復し、その後菩提樹の下で瞑想して悟りに達したという。この像は、苦行の場から立ち去る姿を表現したものである。
こうした出山釈迦の姿は、中国の宋や元の仏画の題材としてよく描かれ、日本にも請来されている。彫刻としては、奈良国立博物館にも同様の像が所蔵されているが、例は少ない。
本像、奈良国立博物館像ともに宋・元の仏画をそのまま立体化したような姿であるが、比べると本像の方がやや洗練されていず、そのためにかえってお釈迦さまの苦悩が伝わってくるようにも思える。
像高は約130センチ。一木造。室町時代ごろの作。
頬はこけ、あばら骨は浮き出ている。首筋や上腕も筋が出て、頭頂部もすりきれたようになり、痛々しい。衣もぼろぼろとなり、上半身ではかろうじて左肩にはかかっているほかは手に巻いて持ち、下半身の衣もよれ、すりきれている。
やや前屈みとなり、目は半眼。口は強く閉じて、厳しい表情。長年の肉体を痛めるきびしい修行のため、また、まだ悟りへの道が見えない苦悩がよくあらわされている。
さらに知りたい時は…
『文京区の文化財(増補改訂版)』、文京区教育委員会、2012年