常灯寺の薬師如来像
1月8日午前のみ開帳
住所
銚子市常世田町53−1
訪問日
2007年1月8日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
常灯寺は常世田(とこよだ)薬師と通称され、銚子駅と総武本線の旭駅を結ぶ千葉交通バスで「常世田薬師前」下車、徒歩数分のところにある無住の寺である。
バスの本数は1時間に1本以下で、かなり不便。
→ 千葉交通バス
筆者は東京・浜松町から旭・飯岡を経由して犬吠埼へ向かう高速バスに乗り、見当をつけて「高速小浜」という停留所で下りて歩いた(バスが来た道をバス停「常世田薬師前」まで戻り、そこから右手へ)。20分ほどであったと思う。
本尊の開扉は毎年1月8日の午前中。かなりにぎわっていて、門前の道には車が並び(千葉ナンバーがほとんど。このご開帳は千葉ではよく知られているのかもしれない)、地元の方による模擬店も出ていた。
仁王門を入り正面が本堂である。江戸前期の建築で、茅葺きの立派な建物だが、傷みが激しく、解体修理をめざして地元の方が寄付を募っていらっしゃった。
拝観料
志納
仏像のいわれ
像内銘より、鎌倉前期の1243年に仏師豪慶によって修理されたことが分かっているが、造像の年代や事情など不明である。様式から平安時代末期と考えられる。
付近には風力発電の風車が多く立つ。年間を通して風が強い地域なのであろう。そうした環境の中で、よくこれだけの保存状態を保って仏像が伝えられてきたものと思う。
拝観の環境
本堂手前右側の収蔵庫に本尊の薬師如来坐像は安置されている。
扉口からの拝観であるが、外からの光があるので、ある程度よく拝観できた。
仏像の印象
ヒノキの寄木造で、像高は約140センチの半丈六像である。
仏の背の高さは1丈6尺であったとされ、仏像もこのサイズが望ましいと考えられた。しかし、1丈6尺は5メートルもの大きさであり(坐像であればその半分くらいの大きさ。平等院鳳凰堂の本尊などはこの大きさで造られている)、そこまでの造像が難しい場合は、それよりやや小さめの周丈六像や半分の大きさである半丈六像が造られた。しかし、いかに「半分」とはいえ、等身の倍ほどの大きさであり、堂々たる像である。
顔は丸く、螺髪(らほつ、巻いた髪の毛のこと)は小ぶりであり、額のはえぎわが真直ぐな線で表現されているところ、衣紋の襞(ひだ)は浅く、流麗に表現されていることなど、平等院鳳凰堂本尊を造像した定朝の様式をよく受け継いでいるといえる。
保存状態は非常によく、金箔がよく残り、台座・光背まで当初のものであるのは貴重である。台座は蓮台でなく、裳懸座であるのが珍しい。ただし、この台座の一部や光背の周辺部は鎌倉期の修理の際のものである可能性がある。
その他
千葉県立中央博物館(千葉市内)で本像のレプリカが常設展示されている。
さらに知りたい時は…
『仏像半島』(展覧会図録)、千葉市美術館、2013年
『日曜関東古寺めぐり』、久野健ほか、新潮社とんぼの本、1993年
『解説版 新指定重要文化財3、彫刻』、毎日新聞社、1981年