泉屋博古館の国宝鏡像
径15センチの中の10尊
住所
京都市左京区鹿ヶ谷下宮ノ前町24
訪問日
2009年11月15日
この像の姿は(外部リンク)
館までの道
泉屋(せんおく)博古館は、地下鉄東西線の蹴上(けあげ)駅から北へ徒歩約20分。
バスの場合は、館のすぐ前に「宮ノ前」バス停があるが、ここを通る路線は少ないので、西側にある「東天王町」バス停が便利。
開館は春(3月〜6月)と秋(9月から12月上旬)。原則月曜日が休館。
入館料
730円
泉屋博古館について
住友家が蒐集した美術品を展示するために1970年に京都に開かれた美術館で、名前の「泉屋」は江戸時代の住友家の屋号に由来する。
コレクションの中心は中国青銅器および銅鏡。展示室は4つの常設展示室と企画展示室からなる。
展示の環境
常設展示の第4展示室には、銅鏡が多く並べられている。ほとんどが中国鏡だが、一部和鏡も展示される。
国宝指定の「線刻仏諸尊鏡像(線刻釈迦三尊等鏡像)」は平安時代中〜後期の作で、独立ケースに立てて展示されているので、表、裏ともよく見ることができる。線彫りの表面は、真っ正面よりつま先立ちして斜め上からの角度でよく見える。
鏡像の印象
白銅(銅にニッケルを加えた合金。現在の50円、100円硬貨もこの白銅製で、美しい銀色がでる)の八稜(はちりょう)鏡である。八稜鏡とは、鏡の外周が円形でなく、8つの尖った角をつくりだしている鏡で、それぞれが蓮の花びらをかたどっている。径は約15センチと小さな鏡で、厚さは約1センチ。
この小さな鏡の表面に仏菩薩の諸尊が線刻されている。
中央上部に説法印の如来坐像、その左右に菩薩坐像、それぞれの斜め下に象と獅子に乗る菩薩像は普賢、文殊菩薩なので、如来は釈迦像と考えられる。一番下には不動明王、毘沙門天の立像が描かれる。
諸尊の姿は極めて精緻に彫られて、一部摩滅しているものの、全体にたいへんよい保存状態でよく見ることができる。如来像の衣が左腕から下がって膝にゆったりおりていく様子や腹のあたりでしわをつくっているところ。蓮華から下がるアクセサリー。獅子や象の鞍の模様。不動明王には二童子が随伴し、中央の不動尊を見上げている姿など、見飽きない。中尊の前には花が供えられているのだろうか。また、諸尊の間には散華する花びらや草花の模様がちりばめられている。とはいってもぎっしり埋め尽くすような息苦しさはなく、いかにも平安の優美さが感じられる。
裏面は、文様がくっきりと浮き上がって、大変美しい。外区と内区に分かれ、外区は唐草文と蝶、内区は花と鳥が描かれている。
その他
泉屋博古館は仏像も所蔵している。中国南北朝時代の金銅仏である弥勒仏立像と1130年の像内銘をもつ阿弥陀如来坐像だが、常設展示ではない。
最近では2008年秋に「仏の形 心の姿」と題した企画展示で出品され、その後は当分は展示の予定はないとのこと(詳しくは同館にお問い合わせを)。
さらに知りたい時は…
『いにしえが、好きっ! 近世好古図録の文化誌』(展覧会図録)、国立歴史民俗博物館、2023年
『最澄と天台宗のすべて』(展覧会図録)、東京国立博物館ほか、2021年
『神仏習合』(特別展図録)、奈良国立博物館、2007年
『鏡像と懸仏』(『日本の美術』284)、難波田徹、至文堂、1990年1月