勝光寺の聖観音像
迫力と威厳に満ちた観音像
住所
下京区中堂寺西寺町1
訪問日
2012年9月2日
拝観までの道
京都は、東西に一条通、三条通といった平安京の通りを受け継いだ道路が通っている。京都駅の北側にあるのが七条通。勝光寺は、京都駅の北北西、四条通と五条通の間にある。
最寄りバス停は、京都市営バスの「五条壬生川」または「大宮松原」。
阪急の大宮駅、京福電鉄の四条大宮駅より南に徒歩約10分。
櫛筍(くしげ)通という南北の細い道に面している。
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれなど
勝光寺の創建は15世紀。洛中の日蓮宗系の中心的寺院、21か寺の中にも数えられていた重要なお寺で、何度も戦乱や天災などの苦難を乗り越えてきた。
本堂、向って右側の間に、聖観音像が安置されている。平安時代前期の像で、このお寺の歴史よりもはるかに古い像である。近代の初期に廃絶した寺院が勝光寺に併合されることになり、移坐されてきた像とのことだが、それ以外のことはわからない。
拝観の環境
年に一度、5月なかばの日曜日に開帳日を設けているが、短時間のご開帳であるとのこと。その他の日でも、事前にお願いすれば拝観可能である。
像の前のにぎやかな飾り物ごしであるが、ライトもあり、近くよりよく拝観できる。
*知人からの情報によると、現在は5月半ばの日曜日(2024年は5月19日午前中だった)を水子供養の法要日とし、開扉するのみとしているとのこと。
仏像の印象
像高は約110センチの立像。カヤの一木造。内ぐりなく、蓮肉、両腕まで共木から彫り出されている。表面はほぼ素地をあらわし、やや荒れている。色が残っているところもあるが、それは後補で、もともとは黄色系の色で檀像風に着色した像であったと思われる。両手先や垂下する天衣、アクセサリーは後補だが、他は当初部分がよく残る。
とても印象的な像である。
顔は多くの観音像には似ない、威厳と迫力のある相貌である。目、鼻、口はすべて大ぶりで、見開いた目、固く結んだ口に力がこもる。さらに、額を広くとり、二重あご、眉の左右に盛り上がる豊かな髪の束など、異様なほどの力強さで迫る。厨子中にあるために側面の様子はよくはわからないが、面奥はいかにも深そうで、奥行きの豊かさが感じられる。
顔をわずかに傾け、腰は強く左側にひねり、右足をまげ、横に半歩出す。右肩から下がる天衣はゆらゆらと下る。下肢を横切る天衣は足の開きのためもあってか、急角度を描き、強い線を出す。それが裙の襞(ひだ)と響きあって、像に動きをもたらしている。
下肢や手はやや短い。
さらに知りたい時は…
『月刊文化財』681、2020年6月
『古仏』、井上正、法蔵館、1986年