霊山寺の2躰の十一面観音像

  空釈寺境内の観音堂所在

住所

多気町三疋田97

 

 

訪問日 

2011年10月9日

 

 

この仏像の姿(外部リンク)

三重県教育委員会・みんなで、守ろう!活かそう!文化財・木造十一面観音菩薩立像 像高167.5㎝

三重県教育委員会・みんなで、守ろう!活かそう!文化財・木造十一面観音菩薩立像 像高178.7㎝

 

 

 

拝観までの道

三重県を西から東へと流れる櫛田川の右岸に南面して、 空釈寺(空釋寺、くうしゃくじ)というお寺がたっている。

最寄りバス停は、三重交通バスと多気町の町営バスの「四疋田」であるが、本数は少ない(町営バスは土日祝日休み)ので、最寄り駅である紀勢本線の相可(おうか)から歩く方が早い。徒歩30〜35分。相可高校の前を通って四疋田のバス停前まで来たら、そこから北へすぐ。

 

空釈寺の境内にある観音堂には、2躰の十一面観音像が安置されている。厨子中に安置され、年4回、2月17日、3月15日、4月8日、10月10日に開帳されるが、事前申し込みによっても拝観可能。

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺のいわれ

空釈寺境内の観音堂は、ここより南の山にあった霊山寺(れいざんじ、りょうざんじ)の後身である。

行基の開山、空海やのちの時代には隠元が来訪した等伝えられるが、参詣の不便さなどによって、江戸時代中期までには山をおり、この地に移されたという。

そうした経緯によってなのであろうか、空釈寺の境内にありながら、管理は地元の方に委ねられている。ご担当の方については、空釈寺に問い合わせると教えていただける。

 

 

拝観の環境

2躰の十一面観音像はひとつの厨子の中に仲良く安置されている。

お堂の中は明るく、間近よりよく拝観させていただける。

 

 

仏像の印象

2躰の十一面観音像は、ともに立像で平安時代の作。右手に錫杖を持つ(ただし本来の長谷寺式観音の手の形とは異なるので、あとの時代に持たせたものと思われる)。一見しては似ている像のようだが、よく見ると違いも目立つ。

 

向って右側に立つ像は、行基作という伝承を持つ。像高約170センチ、ヒノキの一木造である。

丸顔で、しっかりとした顎のラインが印象的である。目鼻立ちはくっきりとしている。なで肩。ほぼ直立する。

お腹は丸くつくり、それが妊婦を連想させるのか、「子安観音」という異名をもっているとのこと。

衣の襞は浅いが、向って左側の像に比べれば深く、特に下肢ではしっかりと線を刻んでいる。

 

一方、向って左側の像は、一木造より一段階進んだ技法である割矧(わりは)ぎ造でつくられている。樹種はヒノキ。像高は180センチ強と、右側の像より少し高い。

すらりと長身で、腰をひねり、右足を半歩前に出すが、その動きはややぎこちない。特に下肢は薄い衣から形が見えるようにつくられている。しかし、面奥は深く、腰も肉づきがしっかりとして、角度によってはボリュームが感じられる。

面長で、顎は大きくつくり、鼻は高く、口は小さめ。なで肩。衣の襞は極めて浅いが、くっきりとした線がつくられている。

そのほか、条帛の扱いなども左右の像で異なっていて、面白い。

 

 

さらに知りたい時は…

『多気町史』、多気町史編纂委員会、1992年

 

 

仏像探訪記/三重県