石薬師寺の石造薬師仏

  年1度、12月20日に開扉

住所

鈴鹿市石薬師町1

 

 

訪問日 

2008年12月20日

 

 

 

拝観までの道

石薬師寺の最寄り駅は、関西本線の河曲(かわの)駅か加佐登(かさど)駅。どちらから歩いても30分くらいであるが、加佐登駅からの方がわかりやすい。国道1号に出て、JRの線路と鈴鹿川の支流を越えると、間もなく右側にある。また、加佐登駅は比較的大きな駅でタクシー乗り場もある(常駐はしていないが呼ぶことができる)。

バス利用の場合は、三重交通バスの近鉄四日市駅と平田町駅を結ぶ路線で「佐々木記念館」下車、南に約10分。または近鉄鈴鹿市駅かJR河曲駅から鈴鹿市コミュニティバス(庄内・神戸線)でも「佐々木記念館」バス停を通る。ただし、どちらも本数はそう多くない。

 

本尊は秘仏だが、年1度、12月20日のみ「おすす払い」として厨子が開かれる。本堂の向って右側の扉が開かれていて、ご住職が内陣に案内くださった。

 

 

拝観料

志納

 

 

お寺や仏像のいわれ

このあたりはもと高富村といったが、江戸時代初期に東海道の宿が置かれることになり、この石薬師寺の霊験が広く知られていたことから、寺の名をとって石薬師宿となった。

広重の浮世絵シリーズ「東海道五十三次」にもこの寺は登場する。次の宿場である庄野の雨の絵が有名すぎてこの石薬師はあまり印象にないが、山をバックに寺に向う参道が描かれている風情のある絵である。現在もすぐ脇を国道1号が通り、また寺の前の道は旧東海道である。

秘仏の本尊は石造の如来立像で、空海が爪で刻んだ仏と寺では伝える。

 

 

拝観の環境

すぐ前まで寄って拝観させていただける。厨子の扉は上半身分しか開かれないため、下半身の様子はわからない。堂内は明かりがともされ、またご住職みずから懐中電灯で照らしながらご説明くださった。

 

 

仏像の印象

像高約190センチで、平安時代の作と考えられている。この像をまつる本堂は、江戸初期にこの地をおさめた一柳(ひとつやなぎ)氏によって建てられたものである。像が直接地面に立っているため、内陣は一段低くなっている。

 

材は花崗岩で、光る粒が含まれる白く美しい石である。彫りは深くなく、そこから爪で刻出したという伝承が生まれたのであろう。しかし浅い彫りながらうまく凹凸をあらわし、髪や頬、手の丸みが巧みに表現されている。肉髻は高く、首はなきがごときで、体の線は丸い。目は細いが、口もとはしっかりとあらわしている。

手は右手は胸の前に挙げて掌をこちらに向け、左手は腹の前に横にしているが、両手とも指をねじって丸をつくっている。また、薬の壷はもっていないようで、阿弥陀像のようにも思えるが、寺では薬師仏と伝え、厨子の上の梁にも薬壷が描かれている。

 

 

その他

堂内には木彫の日光・月光菩薩像と十二神将像も安置されている。近世作だが、なかなかすぐれたできばえ。

 

 

さらに知りたい時は…

『鈴鹿市の文化財』、鈴鹿市教育委員会、1997年

 

 

仏像探訪記/三重県