林光寺の千手観音像
年1度、8月9日深夜のご開帳
住所
鈴鹿市神戸6−7−11
訪問日
2007年8月9日
この仏像の姿(外部リンク)
拝観までの道
林光寺の本尊千手観音立像は1年に一度、8月9日の深夜から10日の未明にかけてのわずかな時間開帳される仏像である。
この寺は、近鉄線の鈴鹿市駅から西へ徒歩10分ほどのところにある。筆者は深夜の拝観に備えて、駅からもお寺からも歩ける範囲にあるビジネスホテルに宿をとった。
ご開帳は22時30分からということで、その少し前にお寺に着くと、すでに信者の方が本堂の外陣で車座になり、大きな数珠を回していらっしゃった。若干お布施をさせていただき、お堂の隅っこで待っていると、時間を少し過ぎてをご住職の読経がはじまり、やがて住職の手でお堂の奥の中央の厨子が開かれた。お布施をした人の名前が読み上げられたり、一人一人信者が中央に出て、厨子と結ばれている5色の糸を手に取り観音様と結縁(けちえん)をする儀式があり、ご住職の法話があって、23時40分くらいに厨子の前まで進むことを許された。
拝観料
志納
お寺のいわれ
草創は古代にさかのぼると伝える古刹で、鈴鹿市内にかつてあった神戸(かんべ)城主代々の祈願所として栄えたという。
本堂は桃山から江戸初期の再建で、仏像以外にもみどころが多い。天井は植物の絵におおわれ(内陣は長年の護摩焚きでほとんど見えないが、外陣の天井は文様がはっきり見える)、板戸は天部像などが大きく描かれていて、色もよく残り迫力がある。柱にも絵のあとがうっすらと見える。
拝観の環境
本尊像は翌10日未明の1時ごろまでの開帳であり、拝観できる時間は短い。厨子には金網がかけられているが、正面からよく拝観することができた。
仏像の印象
像高約130センチの小ぶりな立像で、ヒノキの割矧(わりは)ぎ造である。
優しい丸顔で、衣の襞(ひだ)も浅く、優美に彫刻されている。頭上面、脇手、持物、光背、台座は後補(数次にわたり補作されてきたらしい)だが、本体の保存状態はきわめて良く、平安時代後期のほんとうに美しい仏像である。
その他
8月9日は四万六千日といって、その日1日お参りをすると46,000日分の参詣と同じだけの功徳があるのだそうだ(桂文楽の十八番「船徳」も四万六千日の話であったのを思い出す)。そして、真夜中のお参りは子(ね)の刻参りといって、特に観音様のご利益厚い時間帯なのだという。
もっと知りたい時は…
『東海仏像めぐり』、田中ひろみ、ウェッジ、2018年
『三重県史 別編 美術工芸』、三重県、2014年
『地方仏を歩く』2、丸山尚一、日本放送出版協会、2004年