普賢寺の普賢菩薩像
エキゾチックな雰囲気の像
住所
多気町長谷202
訪問日
2011年10月9日
この仏像の姿は(外部リンク)
拝観までの道
普賢寺(ふげんじ)は紀勢本線佐奈駅下車、徒歩約25分。
バスだと、松阪駅前から三瀬谷行き三重交通バスで「前村」下車。しかしいずれも本数は少ない。
拝観には事前予約が必要。
→ 三重交通バス
拝観料
志納
お寺や仏像のいわれなど
北に10分ほど行ったところにある金剛座寺(こんごうざじ)の子院であったというが、現在は単立寺院。
本尊は平安時代前期の普賢菩薩坐像で、本堂から収蔵庫に移されている。
収蔵庫のたつ場所には、以前は観音堂があったそうで、その本尊は長谷寺式の十一面観音像。現在は客殿に安置され、こちらもお願いすれば拝観できる。像高約1メートルの立像で、室町時代ごろの作。
拝観の環境
収蔵庫内は明るく、近くよりよく拝観できる。
仏像の印象
普賢菩薩像は、エキゾチックな雰囲気がただよう魅力的な像である。
他のどの像にも似ない。お寺のパンフレットでは、比較的近い雰囲気の像として東寺講堂の梵天像をあげている。なるほどとも思うが、東寺の梵天像は柔らかさを感じ、こちらの像はあたかも石彫のような力強さを覚える。
丸顔。低くまげを結い、素朴な冠をつける。目はややつり上がり、鼻梁は太い。鼻の下は狭く、口は小さめである。あごはしっかりとつくる。印象的な顔立ちである。面奥は深い。
上半身は実に堂々として、厚みもたっぷりとしている。胴はしっかりと絞り、膝は左右にしっかりと張り出す。
そうした力強さの一方で、細部まで丁寧な造形が見られる。横からはまげが渦巻くさまが見え(螺髻)、また肩にかかる髪や耳を横切る二筋の髪束、条帛は細く、それを胸のところで縛っている様子は、なかなかおしゃれでもある。
肩はいかり肩だが、よく見ると左肩がやや上がり、足を見ると右膝が少々上がっていて、左右対称を崩しながら、不思議な安定感がある。
実に古代彫刻の優品である。
像高は90センチあまり、クスノキの一木造。
金剛座寺、近長谷寺への道
普賢寺、近長谷寺(きんちょうこくじ)、金剛座寺の3つのお寺では、「三古寺巡り」という静かなキャンペーンを展開している。
金剛座寺は普賢寺から北側へ10分ほどのぼっていったところにある。
もと大きな寺院であったというが、信長の兵火や、近代の廃仏、戦後の農地解放などで打撃を受けた。先代住職の死後は長く無住となっていたが、今の住職が復興に努力している。
本堂は江戸前期の建物。本尊は如意輪観音像で、室町時代ごろの作という。厨子中に安置され、帳の合間から拝する。
拝観は事前予約必要。志納。
また、このお寺には佐那文庫という宝物館がある。しかし筆者が訪れた時には整備中ということで、見学できなかった。
近長谷寺は普賢寺から40〜45分くらい。
普賢寺のある神坂の集落から西南に10〜15分ほど行くと、旧道と合流する三叉路がある。そこは右(西)。
またすぐに道は二手に分かれ、右が旧道(和歌山別街道)、左が車道で、15分くらいで2本の道は合流するが、すぐにまた左右に分かれるので、右の道へ。
長谷の集落に入り、まもなく右側に近長谷寺への分岐の道しるべがある。そこから北へ、きびしい坂道を15分くらい行くと近長谷寺に着く。
なお、金剛座寺から近長谷寺へ尾根伝いに行ける道がある。毎年春に整備し、気持ちのよいハイキングコースらしいが、秋の時期は蜂が多く、勧められないということだった(金剛座寺の住職さんにお聞きした話)。
さらに知りたい時は…
『三重県史 別編 美術工芸』、三重県、2014年
『多気町史』、多気町史編纂委員会、1992年
『普賢菩薩像』(『日本の美術』310)、山本勉、至文堂、1992年3月