日立市郷土博物館展示の万年大夫夫婦像

新旧あわせて4像を展示

住所
日立市宮田町5-2-22


訪問日 
2023年2月23日


この像の姿は(外部リンク)
日立市郷土博物館・常設展示



館までの道
日立駅中央口2番バス乗り場から、茨城交通バスにて神峰(かみね)公園口下車。バス進行方向左側すぐ。
年末年始と館の定める休館日は休館(毎月月末の月曜日を休みにしているらしい。館ホームページの「お知らせ」参照のこと)


入館料
無料(特別展示が行われているときは有料)


像のいわれなど
日立駅の南西、日立市諏訪町にある諏訪神社に伝わった万年大夫(まんねんだゆう)夫妻の像2体とそれぞれの像内に納められていた2体、計4体。県指定文化財となり、この館で常設展示されている。

万年大夫というのは、藤原高利の別名で、もとは信州神人(じにん、下級の神職)であり、下諏訪明神を常陸国に勧請した人物なのだそうだ。伝えによると、彼は自分と妻の木像をつくって社にまつらせたのち、諏訪湖とつながっているという水穴に入っていって戻らなかったという。

この夫妻の木像が痛んでいると知った水戸藩主の徳川光圀は、新たな像をつくることを命じ、旧像はその中に納められた。
1973年の茨城県による文化財の調査で、伝えの通り、中世の像が中に籠められていることがわかった。


鑑賞の環境
1階常設展示室右手奥の中世史のコーナーに「万年大夫(まんねんだゆう)夫婦像」2組 が安置されている。独立ケースの中で展示され、側面、背面も見ることができる。
徳川光圀によって新像がつくられたのが元禄3年(1690年)であり、そのことは夫の万年大夫の像の背面に刻まれている。肉眼で全文を読むことは難しいが、「元禄三年」の文字はガラスケース越しにわかる。


像の印象
像高は新像の方がおよそ60センチと50センチ、旧像の方が30センチ弱と20センチ強である。ともに坐像で、木像、材はイチイという。旧像は鎌倉時代から室町時代にかけての作である。

新像の夫の像は、かぶり物をつけ、笏を構えてすわっており、親しみやすい顔立ちをしている。すこし笑っているようでもある。夫人の像はより写実的な雰囲気があり、手を前で組み、膝を前に大きく出して、ゆったりとすわる。
一方、古像の方は、人というよりは神の像であるように感じる。夫の像は厳粛そうな雰囲気で、背筋を伸ばし、やはり笏を前で構える。夫人像は夫の像よりも傷みが進んでおり、目鼻立ちはよくわからないのが残念である。また手や足も削られてしまっている。なで肩とし、豊かな髪が左右に下がって耳を隠す。


さらに知りたい時は…
『新修日立市史』上、日立市史編さん委員会、1994年
『図説日立市史』、日立市史編さん委員会、1989年


仏像探訪記/茨城県