東漸寺の薬師如来像

  毎年4月8日にお堂を開扉

住所

横浜市磯子区杉田1−9−1

 

 

訪問日

2012年4月8日

 

 

 

拝観までの道

東漸寺(とうぜんじ)は、JR根岸線の新杉田駅と京急線の杉田駅の間にある。どちらの駅からも徒歩5分くらい。

 

山門は東側にあり、その正面に仏殿(釈迦堂)がたっている。

本尊は釈迦如来像。仏殿内にはほかに伽藍神像、達磨像、薬師如来像、梵鐘(鎌倉後期の永仁の銘がある)などが置かれている。

毎年4月8日の花祭りの日に開扉される。

 

 

拝観料

拝観料などは特に設定されていなかった。

 

 

お寺や仏像のいわれなど

創建年代についてはやや不明な点もあるが、鎌倉後期、名越流北条氏の北条宗長を檀越として建てられた臨済宗寺院である。室町時代に整備された関東十刹のうちにも数えられるなど、東国有数の禅宗寺院であったらしい。

その後衰微したものの、15世紀後半に建長寺の僧、崇一によって再興、現在の仏殿はこの時の再建である。

 

本尊に向って右側後方に安置されている薬師如来像は、かつて寺の西南にあったという末寺、東光庵の本尊で、この寺が近代初期に廃寺になると、本寺に移されてきた。

 

 

拝観の環境

4月8日にお堂は開かれ、堂内で間近に拝観できる

 

 

仏像の印象

像高は約90センチの坐像。寄木造り、玉眼。

表面の金は近年の修復時のもの。それ以前は漆地をあらわしていた。

右手はてのひらをこちらに向け、左手に薬壷をのせる、通例の薬師如来のスタイルである。左右の手はゆったりと構えて、安定感がある。

顔は、目はやや寄り、ほおは豊かに、口許はほころび加減で、明るい表情をしている。

螺髪の粒は小さく整い、髪際はほぼ一直線だが、ほんのわずか中央が下がるカーブを描いている。肉髻はお椀を伏せたような形。

胴をしっかりと絞っていて、全体の印象を引き締めている。衣のひだはしっかりと太めにつくる。組んだ右足は厚みがある。

 

像内には14世紀初頭、15世紀後半、19世紀前半の修理銘が書かれている。14世紀初頭、すなわち鎌倉時代末期に最初の修理が行われているということからも、鎌倉時代前期から中期にかけての像とみることができる。

 

 

その他

本尊の釈迦如来坐像は、像高約80センチの坐像。寄木造、玉眼。中世の禅宗の像でよくみられる「法衣垂下」の形式の仏像である。

 

本尊に向って左後方に安置されている伽藍神像、達磨大師像は、ともに像内に墨書銘があり、東漸寺の名前と1395年の年、作者名として仏師院覚の名前が書かれる。関東十刹のひとつとして寺運盛んであった時期にこの寺院のためにつくられた像として、また年と仏師名がともにわかっている作例として、たいへん貴重である。

伽藍神像は像高約60センチ、中国風の服装をして、椅子に腰掛ける。

達磨大師像は像高約40センチの坐像。

両像ともやや形式化した硬さはあるものの、生き生きとした造形を見せている。

 

 

さらに知りたい時は

『横浜の仏像』(展覧会図録)、横浜市歴史博物館、2021年

『横浜の文化財』第1集、横浜市教育委員会、1990年

『神奈川県文化財図鑑 補遺篇』、神奈川県教育委員会、1987年

『磯子の史話』、磯子区制50周年記念事業委員会「磯子の史話」出版部会、1978年

「東漸寺の薬師如来坐像」(『三浦古文化』16)、清水真澄、1974年9月

 

 

仏像探訪記/神奈川県