松岡美術館の石造半跏思惟像

  頭を美しく飾った菩薩像

住所

港区白金台5-12-6

 

 

訪問

2012年2月26日、 2023年3月4日

 

 

この仏像の姿(外部リンク)

松岡美術館・コレクション

 

 

 

美術館までの道

地下鉄白金台駅から徒歩7分。または目黒駅からは徒歩15分。

原則月曜日が休館日。ほかに年末年始や展示替えの期間休み。

 

*2019年6月より、所蔵品修復と設備点検のため休館→2022年1月再開

 

 

入館料

一般1200円

 

 

松岡美術館について

実業家、松岡清次郎(1894−1989)のコレクションを公開する私立の美術館。

氏は20代から数十年の長きにわたって美術品を集め、古代オリエント美術、中国陶磁、古代東洋彫刻、日本や西洋の近現代絵画や彫刻におよぶ。

1975年に新橋の自社ビル内に美術館を設けたのが松岡美術館のはじまりで、没後の2000年に、自宅があった現在地に移転した。

 

展示室は1階に3つ、2階に3つ。

1階は基本的に常設展示で、オリエント美術、西洋彫刻、古代東洋彫刻、2階は企画展示室で、年間数回入れ替えるが、概ね中国陶磁、日本絵画、西洋絵画の展示となっている。

 

この美術館の特色としては、他館や個人から作品の寄託を受けたり、借り出したりしての特別展を開かないということにある。

全館の展示すべてが松岡清次郎の眼鏡に叶った収集品で構成されているわけで、ジャンルが多岐にわたっているために一見寄せ集め的ではあるが、見方を変えればひとりのコレクターの審美眼によって統一された作品群ということができる。

 

 

展示の環境

松岡美術館のコレクション中、最も充実しているのは、中国陶磁であろう。

しかし、古代東洋彫刻すなわちインド、東南アジア、中国の石彫(仏教やヒンズー教の像)もなかなかすぐれた作品が集められていて、1階の第3展示室で見ることができる。

比較的小さな作品はガラスケース内にあるが、大きな像は露出展示され、近くよりよく見ることができる。

 

 

仏像の印象

菩薩半跏思惟像は、大きさは約70センチ。ガンダーラの青黒い石に刻まれた仏像である。出土地は不明。英国を経て松岡氏のコレクションに帰したという。

像高は約70センチ。丸く大きな頭光を負うが、その向って右半分が失われている。ほかに右手指、左足先など欠失部分もあるが、全体としては保存状態はよい。

 

籐椅子にのり、左足を踏み下げる。頭をやや傾け、右手を近づけて思惟のポーズをとる。我々がよく知る、半跏思惟の菩薩像の姿である。

この姿のガンダーラ仏は必ずしも多くはないが、悟りに至る途上の菩薩の姿として、独尊、脇侍、また群像中の1躰などに見ることができる。朝鮮や日本では弥勒菩薩としてつくられたがが、この像は左手で蓮の枝をとっていて、これは観音の姿であると考えられている。

 

顔つきは整い、落ち着いた表情だが、やや憂いを帯びているようでもある。

額の上には豪華な飾りをいただき、髪はやはり宝飾品のついた布か紐できっちりと整えられているのが、とても目を引く。ネックレスを2本つけ、臂釧、腕釧、天衣をまとう。体勢は自然で、天衣の下になった左側の臂釧の形が浮き出ているさまなど、写実性に富んでいる。

ただ、左膝から2条に分かれ、襞を刻みながら下がる衣の端はいかにも不自然である。こうした細部の様子から、ガンダーラ美術でも最盛期を過ぎた時代の作と考えられる。3世紀後〜末期ごろの仏像と思われる。

 

 

さらに知りたい時は…

『ブッダ展』(展覧会図録)、東武美術館ほか、1998年

『館蔵古代東洋彫刻』、松岡美術館、1994年

『半跏思惟像の研究』、田村円澄ほか、吉川弘文館、1985年

『大東洋美術展』(展覧会図録)、京都市立美術館 1977年

『仏教美術史論考』、高田修、中央公論美術出版、1969年

 

 

仏像探訪記/東京都