堺市博物館の観音菩薩像

  現存最古の檀像彫刻

 

住所

堺市堺区百舌鳥夕雲町2丁 大仙公園内

 

 

訪問日 

2011年1月9日

 

 

この仏像の姿(外部リンク)

堺市の文化財

 

 

 

博物館までの道

堺市博物館はJR阪和線百舌鳥(もず)駅下車、西へ徒歩5〜10分。

伝仁徳陵、伝履中陵など古墳にかこまれた立地で、すぐ前も伝仁徳陵の陪塚である。

原則月曜日休館。

 

堺市博物館

 

 

入館料

常設展一般200円

 

 

博物館および仏像について

堺市博物館の常設展示は、古墳文化と戦国時代の自治都市の形成を中心に構成されている。

逆に言えば、その他の時代の展示はほとんどない。仏教美術の展示も少ないが、1躰、すばらしい仏像が常設展示されている。

その像、観音菩薩立像は、もと市内の円通寺というお寺の客仏だったが、今はこの博物館の所蔵になっている。

 

 

展示の環境

独立ケース中に展示され、四方よりよく見ることができる。

 

 

仏像の印象

像高は70センチあまり。冠に化仏をいただいているところから、観音像とわかる。

材は白檀(ビャクダン)であるという。おそらく現存最古の檀像彫刻であり、この種の像としてはかなり大振りである。制作地は中国(隋)とも朝鮮(百済)とも日本(白鳳期)ともいわれる。

 

両腕や足先を失うなど、やや痛々しくも見えるが、本体の保存状態はよい。冠やアクセサリーの彫りが細かく、美しい。おそらく全身に今は失われたアクセサリー類をつけていたらしい。本来はどれほど華やかな像であったかと思うが、現状でもたいへん可憐で魅力ある像である。

 

顔は大きく、目はややつり上がり、鼻は大きい。大味な顔のようでもあるが、少し角度を変えてみるとなかなかすがすがしい表情をしている。まげは低く、後に反っている。まげの前面が丸くなっているのは宝珠の表現らしい。冠はその上部が欠けているようで、本来はさらに高く、華やかだったと思われる。

衣の襞(ひだ)の彫りは浅い。いかにも硬い材質を丁寧に彫刻という感じで、石彫を思わせる。天衣は左右から下がって来てものが膝のところで交差し、幅広くなっているのが面白い。

 

ほかに特色として、まげ(髻、もとどり)の正面に直接に宝珠が彫刻されているのが珍しい。

 

 

その他

檀像というと素木というイメージだが、この像は全体に赤っぽい染料が塗られているらしい。

本来檀像は南方産のビャクダンで彫った像のことである。この木はあまり大きくならず、せいぜい直径にして60センチくらい、そのうち香りのある中心材のみが用いられるので、この仏像の頭体部はビャクダンからつくり得るぎりぎりの大きさと思われる。

ビャクダンの材は基本的には白っぽい肌合いだが、上等のものは黄色や赤味を帯びた色合いであるという。おそらくこの像も上等材の色調を意識して着色されたものであろう。

 

 

さらに知りたい時は…

『大遣唐使展』(展覧会図録)、奈良国立博物館、2010年

「円通寺旧蔵観音菩薩立像について」(『学叢』12)、伊東史朗、1996年

『大阪の仏像』(展覧会図録)、堺市博物館、1991年

『檀像』(展覧会図録)、奈良国立博物館、1991年

『檀像』(『日本の美術』253)、井上正、至文堂、1987年6月

『堺の仏像仏画』(展覧会図録)、堺市博物館、1985年

 

 

仏像探訪記/大阪府